シェアサイクルの課題

目下の課題は、エリア拡大、台数や駐輪ポート数の増加となるが、今後は駐輪ポートの場所も問われていきそうだ。かつての放置自転車問題の影響もあってか、都内の駐輪ポートは目立たない場所に置かれることが多い。

これはドコモ・バイクシェア並びに事業者全体にとっての課題だ。本来、駐輪ポートは、利便性の観点から、公道上が目立ち最適だが、そこにはないのが現実だ。駐輪ポートの場所が変わることで利用者数も1日1台当たりの利用数も大きく伸びそうに思える。この点に関して堀社長はどう考えているのか。

「日本には多くの規制がある。規制自体が悪いわけではない。駅は放置自転車の山になっていたという過去もあった。歩道に雑然と放置された自転車の姿は市民感情からしてもほおっておけない。モラルの上に規制があり、それは仕方ないこと」と話す。とはいえ、ドコモ・バイクシェアでは都内10カ所に限って公道上に駐輪ポートが設置済みという事実もある。「ドコモ・バイクシェアなら大丈夫だと信頼してもらい、理解してもらえるように運営していけば、少しずつ増やしていけると思う」とする。

公道上にバイクポートをさらに設置することで利用回数の増加が見込めそうだ

おそらくこの課題に実効性の高い対策は存在しない。国内最大手が辿りついた答えが「適切な運営を継続し、信頼を得ること」であり、それが最良の解決法なのだろう。

こうしてドコモ・バイクシェアの事業を見ていくと、自治体とともに、市民生活の向上のために街づくり事業の一端に関わっているように見えてくる。その立ち位置から推察すると、おそらく、数年後、十年後と時を経るに従い、嫌味のない形で、街中の移動手段として、シェアサイクルの存在が大きくなっていくとしか思えない。ドコモ・バイクシェアが目指す日本全国2万台という理想の実現に向けて、街の景観を短期間で一変させてしまうことはなさそうだ。