第2四半期は、ほぼ前年並みとなる売上高1720億円(33億円増)だが、為替影響による89億円の増収が大きく、スマートフォンの販売台数の減少による実質的な減収だろう。営業利益でも、前年の37億円に対して25億円の赤字と62億円の損益悪化。こちらは為替影響がマイナスに作用し、ドル建て部材の悪影響や、調達部品の価格上昇などが影響した。

通期見通しでも売上高は期初予想8200億円に対して400億円マイナスとなる7800億円。営業利益についてはオペレーション費用の削減などで変更なしとした。なお、販売台数目標は2016年度実績が1460万台、8月時点の見通しが1650万台に対して、今回の見通しでは1550万台と100万台減少した。

説明会で吉田氏は、「(代表取締役社長の)平井が掲げる『ラストワンインチ』というメッセージのためにも、B2Cのハードウェアはしっかりやっていく。スマートフォンはカメラという側面が強く、ここで技術差異を見せることが重要。腰を据えて立て直していきたい」と説明した。

細かいスマートフォンの販売環境としては、欧州市場こそ販売台数が伸長しているものの、中近東やアジア地域で販路を拡大できず、東南アジア地域における政治リスクも勘案しての下方修正だという。加えて、日本国内でもソニーが納品する主要3キャリアではなく、MVNOを選択するユーザーが増えたことで、SIMフリー端末市場が成長。当初より下振れを見込んでいたと話す。

モバイル・コミュニケーションとしては、スマートフォン以外にもXperia Hello!B2BソリューションなどのIoT時代を見据えた事業展開を模索しているが、製品としてボリュームが出るだけでなく、スマホ時代における"顔"をそう安々と手放せないジレンマが垣間見える。

かねてから言われるように、スマートフォン市場の利益の大半はアップルとサムスンで占められ、ソニーと同じくかつて市場のシェア上位だったLGやHTCも赤字で苦しむ。市場はプレミアム製品とエントリーモデルの二極化に加え、中国勢が中間層の市場を大きく取っている。

ソニーはそうした市場に対して、プレミアムセグメントに商品を絞った形で、吉田氏が語ったカメラの高機能性などを推している。ただ、アップルやサムスンが立て続けに発表したワイドディスプレイや、すでにプレミアムセグメントでは市場の主流となりつつある二眼カメラなど、ソニーがキャッチアップ出来ていない機能も多い。

スマートフォンの開発サイクルは1~2年と言われているが、2016年度にプレミアムセグメントに商品を絞ってから"いい時期"に差し掛かりつつある。全社的に好調な環境ながら「(1997年度以来の過去最高益見通しに対して)自身を超えられなかったという捉え方で、未来を見据えて成長し、生き残れるか、緊張感を持って経営にあたりたい」と吉田氏は気を引き締めていたが、良くも悪くも象徴となるスマートフォンが生き残れるかもまた、「ソニー復活」の一つのサインと言えそうだ。