また、別の角度から見ると、2019年度の海外売上高は2016年度実績の1.8倍に拡大。とくに、テレビ市場への再参入を図る欧州では、この3年間で3.3倍にまで拡大。中国市場でもテレビにおける付加価値展開を軸に、2.5倍に拡大する計画だ。

「シャープはガラパゴスにならないように、国籍は関係なく、グローバル人材を登用。経営の現地化をしていく」とする。

さらに、デバイスという観点でみれば、IoTデバイスや8Kデバイス、車載デバイスなどの成長により、今後3年間で、1.6倍の事業拡大を目指すという。

鴻海とのシナジー効果をどこで発揮させるか

こうした高い成長計画のベースになっているのは、シャープの強みが発揮できるところを伸ばすという基本姿勢と、その成長において鴻海が持つ力をとことん利用しようという姿勢だ。

また、戴社長は、「シャープは、幅広い事業、独自技術、商品の独創性、革新的なデバイスという強みを持つ。だが、その一方で、商品ラインアップ、デバイス設備の世代更新、グローバル展開を支える人材・リソースといった点での課題がある。強みをさらに強化するとともに、マネジメント力の強化、鴻海グループとのシナジーにより、AIとIoT、8Kエコシステムといった『新技術』と、技術力とコスト力を生かした事業拡大による『グローバル市場』を、当社が狙う事業機会と位置づけている」と説明する。

言い換えれば、新技術での成長は、シャープの得意分野を生かしたものであり、グローバル市場での成長は鴻海とのシナジーによる成果ということになる。

「シャープでは、事業企画の強化やローカルフィット、コア技術開発の強化、工場のスマート化など、付加価値モデルの創出とビジネスモデルの転換に注力する。その一方、共同開発、共同調達、生産委託、物流において、鴻海とのシナジー効果を生かし、事業拡大のスピードを効率的に高めていくほか、OEMやOEMベンダーとの連携、サービス事業者との連携を図るなど、社内外のリソースを効果的に組み合わせることで、バリューチェーンを最適化し、事業拡大、ビジネスモデルの転換を加速する」と、戴社長は基本戦略を示す。

戴社長は、この9カ月間で、シャープの強みと弱みを熟知し、それを素直に中期経営計画に反映させたともいえる。

「過去の経営陣の失敗は、責任感の問題」と言い切る戴社長。経営陣を完全に刷新し、本当の意味での鴻海による再生が始まったといえる。