「日本の小売店は小規模店舗が多い。北米市場の規模にあわせた大型化が必要であり、パナソニックの技術を活用して、北米市場に最適化した製品として投入する。だが、北米にも小型店舗がないわけではない。そのあたりにもパナソニックのノウハウを活用したい」とする。

ハスマンのティム・フィギィCEO

パナソニックでは、店舗向け遠隔データサービス「s-cubo」を活用し、設備管理やメンテナンス、予防保全などのサービスを提供している。同様のサービスを米国でも展開する予定であり、「日本での実績を学び、商品化を進めたい」としている。

2つめはソリューションの強化である。これまでは機器の販売を中心となっていたが、食品流通のトータルソリューションとしての提案を加速する。

たとえば、小売店向けの場合、先の記事にて触れたローソンの事例のように、冷蔵ショーケースのほかに、太陽光発電や蓄電システム、サイネージ、セルフレジなどの導入を図っているが、こうした動きはこれから加速しそうだ。パナソニックが持つ商材を組み合わせることは、競合他社にはできない提案にもつながる。

そのためには、アプライアンス社以外のカンパニーを超えた連携も鍵になってくる。また、国内のコンビニでは、年間の出店数が多いため、その動きにあわせた事業スピードを持つ必要がある。そうした体制づくりが、今後の課題といえそうだ。

そして、3つめは、新たな冷媒技術の活用である。

冷蔵ショーケースなどには、これまで特定フロンや代替フロンが使用されてきた歴史があり、オゾン層破壊や温室効果といった環境への負担が課題となっていた。

周知の通り、世界的にフロン撲滅の動きがあり、先進国においては、2020年までに特定フロンを全廃。2036年までに代替フロンを85%減とすることが決められている。パナソニックでは、新たな環境規制を見越してCO2冷媒に対応した製品を2011年から製品化。ラインアップを拡大しており、2017年も、コンビニなどでの平置きショーケースに対応した12馬力モデルを投入。制度に先駆ける形で、地球温暖化防止に向けた対応を図っている。

パナソニックが、ハスマンと共同開発している北米市場向けの冷蔵ショーケースもCO2冷媒を使用したものであり、ハスマンとしては初のCO2冷媒の製品。パナソニック全体として、こうした動きを加速する考えだ。

さらに、IOTやクラウドを活用したサービス提案にも力を注ぐ考えだ。

日本では、ECHONET Liteを業務用に展開。ERMOS(エレモス)による遠隔運用サービスにより、ショーケースの温度を時間ごとに管理をしており、安定的な運用を実現するとともに、予防保守などにも活用していく考えだ。現在、ERMOSは、国内では約2000店舗で導入されており、アジアや中国などにも展開を開始している。ハスマンでは、温度管理のサービスは提供していないが、今後、同様のサービスを開始することになる。

パナソニックの津賀一宏社長は、「食品流通事業を、BtoBソリューションの柱にしたい」と語り、2018年度以降には、約4000億円の売上高を目指す方針を示している。

ハスマンのティム・フィギィCEOも、「パナソニックとの連携により、未来を作ることができる。食品・流通分野における世界ナンバーワン企業を目指す」と意気込む。

成長事業としてのポジションや、世界ナンバーワンシェアを実現するためには、世界最大のショーケース市場である米国におけるハスマンの事業成長が目標達成を左右するのは明らかだ。

実際、食品流通の設備事業は全世界で7兆円の市場規模があるとされ、そのうち、2兆円強が北米に集中する。

パナソニックの技術やノウハウが、ハスマンにとって、成長に向けたアクセルとなるのかがこれから注目される。