さて、この訓練は100メートルほどの範囲で行われていたため、事故現場前方付近を見学しているうちに、いつのまにか後方に消防隊が到着していた。消火作業はもちろんのこと、車内に閉じ込められた、意識を失っているのであろう設定の運転手の救助に移る。救助隊は横浜市消防局と県警即応対策チームによるものだ。

乗用車のフロントガラス上部が切り取られ、屋根が引きはがされていく。あっという間に乗用車の屋根は開き、運転手の救助に入る。ほぼ同時に、横転したトラックの処置にあたる。エアジャッキを使い、こちらも短時間で立て直していた。やがてレッカー車が到着。事故車を次々とトンネル内から搬送していく……。

消防隊が到着。乗用車の屋根をはがし運転手を救出した

エアジャッキにより、横転したトラックを元に戻す

事故現場の処理を終えたパトカーや消防車が現場を離れ、黄色の首都高パトロールカーは、まるで隊列を組むかのように去って行った。ここで初めて気づいたのだが、首都高パトロールカーは、事故現場に来る際は赤色灯を回していたが、去るときには黄色灯を回していた。首都高の宮田社長にたずねると、「事故現場への急行時は“赤色”、事故処理が終了したのちは“黄色”に変わります」と話した。

人の力こそ重大事態には必要

首都高速道路の担当者によると、「開通前の高速道路だからこそ、これほどの大規模訓練が行えました」と話す。また、県警や消防は、「トンネル内での訓練は滅多に行えないので、今回は貴重なものとなりました」と口をそろえていう。

訓練を終始見学させていただいて、もっとも印象的だったのが、県警、消防、首都高職員たちのテキパキとした動き。迅速にミーティングし、ハキハキと指示に答え、そして自らの役割を全力で果たす。事故を想定した訓練の感想に、こんな表現を使うのは不謹慎かもしれないが、正直「カッコイイ」と思ってしまった。やはり、事故といった重大な事態でもっとも頼りになるのは“人”そのものなのだなと心に刻んだ。

迅速に状況判断し、緊急ミーティングで救助方針を確認する消防の特別高度救助部隊(左)。いつの間にか指揮本部が立てられていた。県警、消防、首都高の職員が集まり、適切な対策を協議する

そうそう、訓練の見学も貴重な体験だったが、帰り際に珍事もあった。新横浜に戻るマイクロバスが方向を間違え、なんと高速道路上でスイッチバックしてUターンしたのだ。“逆走”という、開通前の高速道路でしかできない体験もしてしまった(笑)。