すでにある自然に売れていくエコシステム

Mac事業は、つい最近まで、アップルの中で3つ目に大きな事業だったが、最近、第2位に返り咲いた。当然トップはiPhoneで、長らく第2位はiPadだったものの、iPadの販売不振で、再びMacが第2位の規模になった。とはいえ、こちらも減少傾向だ。

アップルはiPod以来、マスに人気のある製品を活用した、同社の製品やサービス全体のエコシステムを潤す「ハロー効果」を上手く活用してきた。iPodをWindowsユーザーにも開放したが、そのユーザーをMacへ移行させる「Switchキャンペーン」も有名だった。

現在の中心はiPhoneだが、ブランドの身近さをアピールするに留まらない綿密な戦略がある。まず、iPhoneユーザーに対しては、App Storeの充実ぶりを強調する。例えばPokemon GOやSuper Mario Runといった人気タイトルの配信をアピールすることは、これらのゲームがAndroidプラットホームで配信されていても、アプリ購入や課金売上はアップルのほうが大きくなる。

またApple MusicやiCloudなどのサービスの拡充は、前述のApp Storeの売上とともに、「サービス」というカテゴリの2桁成長を持続させている。製品でみると、Apple Watchも、iPhoneと組み合わせる前提となる製品だ。

ではMacはどうだろうか。

iPhoneユーザーが同じブランドのMacを選択するメリットを、macOS Sierraでは整えている。Apple Payの利用や、Apple Watchによる自動ログイン、iCloudでの写真や文書の共有、端末間で作業を引き継ぐハンドオフ機能などがそれにあたる。

macOS SierraではApple Payの利用が可能

Apple Watchによるロック解除もある意味iPhoneがもとになる機能だ

さらに、成長するApp Storeに対してアプリを開発するためには、現段階では(そして今後も)Macで動作する開発アプリXcodeが必要となる。Macも、開発者向けには、すでにiPhoneのエコシステムに組み込まれ、iPhoneとApp Storeの継続的な成長が、Macの成長につながるという形ができあがっている。