行政も中古スマートフォンの販売を後押し

そして中古端末の流通活性化は、MVNOの競争力向上を目指す総務省、ひいては行政の側も積極的に後押ししている。実際、昨年実施された総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の取りまとめにも、「中古端末市場の発展が望まれる」と記されている。それだけに、MVNOを活性化するための動きの1つとして、行政側も中古端末市場拡大に向けた取り組みを今後も積極的に推進していくものと考えられる。

しかしながら行政側は、中古市場の拡大にはまだ不足があるとの認識を示しているようだ。例えば公正取引委員会が8月2日に公表した「携帯電話市場における競争政策上の課題について」によると、中古スマートフォン端末の流通数は平成26年度で227万台と、新品スマートフォンの出荷台数の8%にとどまると記しており、流通数が少ないことを問題視している。

この報告書には、その理由が明確に記されている訳ではないが、「端末メーカー又はMNO(大手キャリア)が、不当に高い価格で中古端末を購入する場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある(不当高価購入、取引妨害等)」と、キャリアや端末メーカーが中古端末の流通に関してけん制する記述がいくつかなされている。こうした公正取引委員会の動きは、国内で絶大なシェアを持つアップルをけん制する動きと見る向きも多いようだ。

無論、現時点で報告書に具体的な企業名が記されている訳ではないため、その真相は定かではない。だが仮にもし、特定のメーカーが国内で、新品の価格維持のために中古端末の流通を操作することがあれば、中古市場を活性化する上では大きな問題となってくるだろうし、その際は行政が強硬的な手段に出ることを明確に示したことは、今後の中古端末販売動向を占う上でも大きな意味を持つ。

このように、iPhoneのような人気端末をラインアップに揃えたいMVNOと、MVNOを後押ししたい行政による積極的なサポートを受ける形で、中古端末の販売は今後大きく伸びていくものと考えられる。現状のMVNOの規模からしても、それが新品のスマートフォン販売に直接大きな影響を及ぼすようになるとは考えにくいが、従来以上に中古端末が身近な存在となることは、確かであろう。