アクセルスペース
代表取締役 中村 友哉氏

超小型衛星の開発・運用を行う宇宙ベンチャー企業 アクセルスペースは12月10日、50機の超小型衛星を2022年にかけて打ち上げ、衛星から撮影した地球観測画像データを提供するオープンなプラットフォーム「AxelGlobe」を構築すると発表した。すでに公表されていた内容だが、今秋に「シリーズA投資ラウンド」で総額19億円の調達を完了したことから、この調達資金をもとに2017年にまず超小型衛星「GRUS」3機を打ち上げて地球観測画像データ事業を推し進める考えで、同社の新規事業参入が本格的に加速することとなる。

アクセルスペースは、民間の商用超小型衛星の開発・運用をこれまで行ってきた。2013年にウェザーニューズとともに北極海の海氷観測のために開発した超小型衛星「WNISAT-1」の打ち上げに成功。2014年には地球観測を目的とした実証用の超小型衛星「ほどよし1号機」の打ち上げに成功し、2016年には「WNISAT-1」の後継機となる「WNISAT-1R」の打ち上げを予定している。

同社はこれまで顧客の衛星を開発してきたが、今回の「AxelGlobe」は同社自身が衛星を持ち、撮影したデータを提供するビジネスモデルとなる。大きな方向転換とも思えるが、超小型衛星の利用を増やしてより豊かな社会を実現するという同社の理念にそったビジネスに変わりはない。

同社の開発するGRUSは質量約80kgでサイズは60cm×60cm×80cm、地上分解能はパンクロマチック画像で2.5m、マルチスペクトル画像で5m、撮影幅は57km。このGRUS 3機を2017年に打ち上げ、2018年にはサービス提供を開始し、地域は限定されるもののデイリーでの地球観測を行う予定としている。その後は、IPOも視野に入れつつ新たな資金調達などを行い、2020年には10機の配備、そして2022年に50機を配備し全球のデイリー観測を開始する。

これらで得られたデータは、同社が構築するオープンなプラットフォーム「AxelGlobe」で利用できるようにし、あわせて第三者から提供されるドローンで撮影された航空写真データや気象データなどを組み合わせたプラットフォームの実現を目指す。これらのデータにアクセスするためのAPIも公開し、さまざまな事業者が独自のアプリケーションを開発できるプラットフォームとすることで地球観測画像データビジネスを進めていくという。

想定される利用用途としては、画像解析による農作物の収穫時期や収穫高予測、精密農業への利用といった農業分野、森林資源の監視や管理などの林業分野、地上の経済活動の統計データによるマーケティング活用など産業分野などが挙げられる。

AxelGlobeは50機体制で全陸地の約半分(経済活動地域においてはほぼ全域をカバー)を毎日観測することで、必要な画像データが存在するシステム、超小型衛星やシステム自動化による低コストな運用、日々観測されるデータの蓄積によって過去のトレンドから未来を予測可能な点などがその特徴となる。