パナソニック溶接システムは3月5日、アーク溶接ロボットマニピュレーター「TLシリーズ」に新たなラインナップとして、ロングアームタイプ「TL-1800」および「TL-2000」を加え、同月17日より発売(工場出荷)すると発表した。

同社は2010年以降、「進化するTAWERS」として、溶接ロボット用コントローラーや溶接工法、溶接アプリケーションなども含めて開発してきた。しかし、アーク溶接ロボット需要の多くを占める自動車業界を初め、市場ではさらなる生産性の向上、生産コスト低減や溶接品質の向上などが強く求め続けられていることから、それらの市場ニーズに応えするため、好評というトーチケーブル外装型ロボットマニピュレーター「TAシリーズ」のロングアームタイプを進化させ、長尺・大型ワークでのさらなる生産性の向上や溶接工程での新たなソリューションを提案することにした形だ。

今回の2機種は、前述したようにTAシリーズロングアームタイプを進化させ、基本性能の向上や溶接に特化した独自構造を採用することで、タクトタイム(工程作業時間)の短縮や使いやすさが向上されている。また今回、最大リーチを1999mmに拡大した、従来機「TA-1900」との比較で104mm長いTL-2000も開発し、1月に発売を開始した「TM-1800」(「TMシリーズ」はトーチケーブル内蔵・外装統合型マニピュレーター)と併せ、3つのロングアームタイプを取り揃えた形だ。

今回の2機種を加えたことで、アーク溶接用ロボットマニピュレーターTLシリーズとしての特長は、(1)長尺・大型ワークへ適用可能なロングアーム3バリエーション、(2)基本性能の大幅向上により、タクトタイムの短縮を実現、(3)アーク溶接に特化した構造設計により、使いやすさが向上、の3点となる。

以上の3点についてもう少し詳しく触れると、まず長尺・大型ワークへ適用可能なロングアーム3バリエーションについてだが、長尺・大型ワークへの適用範囲を拡大するロングアームマニピュレーターのラインナップが拡充された形だ。シリーズの最大リーチと最大可搬重量は以下の通りとなる。

  • TL-1800:最大リーチ1801mm、最大可搬質量8kg
  • TL-2000:最大リーチ1999mm、最大可搬質量6kg
  • TM-1800:最大リーチ1809mm、最大可搬質量6kg

2点目の基本性能の大幅向上により、タクトタイムの短縮を実現したことについては、駆動モータ容量と減速機定格をアップさせることにより、基本軸最大速度がパナソニック従来機(TA-1800、「TA-1900」)比116%と向上させた。これにより、タクトタイムを短縮することが可能となり、生産性向上に貢献できるとしている。

3点目のアーク溶接に特化した構造設計により、使いやすさが向上したことについては、溶接ワイヤ用コンジットおよび溶接ケーブルを内蔵する独自の旋回構造を採用し、ロボットの周囲との干渉を大幅に低減する仕組みが採用されたことが1つ。さらに、旋回動作などによる溶接ワイヤ用コンジットの不要な動きを抑制することにより、安定したワイヤ送給を実現した点も挙げられる。これらにより、溶接品質を向上するとした。

近年の同社のアーク溶接ロボットの需要動向だが、2011年度実績1万7998台、2012年度実績:1万7445台、2013年度見込みが1万8500台、2014年度見込みが1万9500台としている。なお、2011年度、2012年度実績については日本ロボット工業会データの引用で、見込みは同社の予想だ。今後の販売計画としては、月間生産台数:150台としている。

スペックは以下の通り。

  • 名称:TL-1800
  • リーチ:最大1801mm
  • 構造:6軸独立多関節型
  • 最大許容可搬質量:8kg
  • 据付姿勢:床置・天吊(天吊設置は、オプション仕様)
  • 本体質量:約215kg
  • 希望小売価格(税別):オープン価格

  • 名称:TL-2000
  • リーチ:最大1999mm
  • 構造:6軸独立多関節型
  • 最大許容可搬質量:6kg
  • 据付姿勢:床置・天吊(天吊設置は、オプション仕様)
  • 本体質量:約216kg
  • 希望小売価格(税別):オープン価格

同社は今回の製品で、長尺・大型ワークへの適用範囲を拡大し、高性能溶接電源による高速、高品位溶接を追求した「TAWERS(WGIII)シリーズ」やフルデジタル溶接電源との組み合わせ「GIIIシリーズ」により、高品位溶接と生産性向上の両立を図り、アーク溶接ロボットのさらなる普及を目指すとしている。