マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など、多数の作品を発表し、CM、PV、テレビ番組などの映像制作も行う、マルチクリエイター・タナカカツキ。本レポートでは、タナカカツキ流、3DCGソフト「CINEMA 4D Broadcast」の使い方を紹介していく。

映像作家・タナカカツキ

数年前、「ALTOVISION」というブルーレイのCG作品をリリースしました。これは、コンピューターと人間が描く現代の高画質ビデオドラッグ映像です。この作品の中で、ぼく自身、初めて「CINEMA 4D」を使用したのですが、このときに主に「MoGraph」機能というステキな機能を使いまくりました。この機能では、手描きの動画では表現できないような、"これぞCG特有の美しい数学的な動き"を炸裂させることができるのです。

MoGraphはCINEMA 4Dの特徴ともいえるような機能ではないでしょうか。プレビューもストレスを感じなかったので、もはや制作するというよりは、「遊んでる」という感覚に近い状態でした。プレビューだけで最終的なレンダリングをするのを忘れそうになるほどです(笑)。

当然、CINEMA 4DにはMoGraphだけでなく、モデリング、マテリアルの設定など、魅惑的で強力な機能が充実しているのですが、どうもぼくは、このMoGraph機能が好きすぎて、なかなかそれ以外の機能まで手が及びません。それほどひとつの機能が奥深いということでしょう。

前置きが長くなりましたが、今回、3DCGソフト「CINEMA 4D Broadcast」と動画編集ソフト「After Effects」、画像編集ソフト「Photoshop」を使って一本のムービーを作成してみました。Photoshopでは画像加工、CINEMA 4Dでは3DCG素材、それらをAfter Effectsで組み合わせた動画になっています。まずはムービーをご覧下さい。(音は入っておりません)


単純な立方体や球体、プリミティブなオブジェを使い、CINEMA 4Dで遊んでる雰囲気が伝わりますでしょうか? 途中で登場する人物は2次元の平面的なイラストですが、 手のひらのイラストにみえる部分はCINEMA 4Dで簡単なモデリングをしておりますので、オブジェの影を手のひらの形に沿って変化させ、落とすことが出来ます。ムービーは以下のように分解できます。

前半とラストはCINEMA 4Dで素材制作

手のひらは見える部分のみモデリング

画像の素材

立方体や球体に写り込んでる環境テクスチャー

今回、人物は平面のイラストを用いました。平面イラストと3Dの素材がひとつのムービーの中に混在する違和感が個人的に好みなので、そのようになりましたが、すべてCINEMA 4D上で3Dオブジェとしてモデリングしても楽しいかもしれません。

CINEMA 4Dの世界だけを"ガッツリ知りたい! "ということであれば、ネット上にCINEMA 4Dで制作されたムービーがアップされていますので、「CINEMA 4D」、「C4D」などのキーワードで検索すれば、ご覧になることができると思います。「MoGraph」というキーワードを追加してもよいと思います。細かい制作方法などを知りたい場合はチュートリアル動画も多くアップされています。

この記事は後半へとつづきます。後半ではMoGraph機能で表現した部分をもう少し細かく、そしてAfter Effectsでの連携のお話ができたらと思います。

「ALTOVISION」サンプル動画



タナカカツキ
1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「CINEMA 4D」、「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。キリンジのアルバム『BUOYANCY』など、CDのアートディレクションも手掛ける。