アドビの期間限定ギャラリー「station 5」にて、全国の美術系の学生に向けたセミナー『アドビ×美ナビ presents 実践! 作品を「活かす」ポートフォリオ Fine art編』が開催された。セミナーでは、就職に役立つ魅力的なポートフォリオの制作法が紹介された。

セミナーには、美大生のためのフリーペーパー「パートナー」の出版・発行を行っているモーフィングの取締役 中川恭志氏と、アドビ システムズ 教育マーケット営業部 宮岸尉子氏が登場。中川氏はイベントの前半で、美大生の就職事情や、クリエイティブ系の就職活動におけるポートフォリオの重要性を語った。イベントの後半で中川氏は、フリーペーパー「パートナー」の編集に携わっていた多摩美術大学の松永美春さんをステージに上げた。松永さんはすでに広告代理店の内定を決めた現役大学生。松永さんは実際に就職活動で使用した自身のポートフォリオを持参し、その制作方法を披露した。

松永さんは、来場者に自分が作ったポートフォリオを公開

松永さんがポートフォリオ制作時に気を使ったこととして挙げたのは「写真の撮り方」。彼女は以前から写真に興味があったそうだが、撮影時には三脚を使用して、手ぶれには細心の注意を払ったと言う。ポートフォリオの作品を見終わったあとでアドビ 宮岸氏は、「電車の写真が合成だったなんて思わなかった」と感想を述べた。ポートフォリオの写真にはステッカーが貼られた青い電車が写っているのだが、実際はなにも模様のないただの赤い電車だったそうだ。それに松永さんは「Photoshop」を使って色調を変更、作成したイラストをステッカーとして貼り付けたという。松永さんが会場のスクリーンに合成写真のPSDファイルを公開すると、宮岸氏は「PSDの作り方は完璧ですね。スマートフィルターや調整レイヤー、レイヤーマスクなどをうまく使っています。ボケや映り込みなどがリアルだったから合成とは思わなかった」と驚きを隠せない様子だった。

ポートフォリオ内に文字が少ない理由について松永さんは「相手の立場になったら必要ないと感じた。文字がないと逆に相手から質問してくれる」と語った

母校の教室を使って制作した松永さんの作品

宮岸氏が感心した作品。よく見るとステッカーは単色ではなく、陰影も描かれている

元画像を壊さないように、フィルターは「スマートフィルター」を適用させている

松永さんはPhotoshopで作品を仕上げた後に、「Illustrator」でレイアウトを作り、ポートフォリオの印刷を行なったそうだ。宮岸氏からは、「せっかくここまで作ったのなら、『InDesign』を使ったほうがよかったですね」とアドバイス。InDesignならば複数のページを管理しやすいし、ひな形を作ればページデザインの統一も簡単。また、ノンブル(ページ番号)の割り振りも自動で行なえる。この情報を聞いた松永さんは、「実は制作中にプロのデザイナーさんから助言をもらって、何度もページの入れ替えを行なったんです。『InDesign』なら楽そうですね。使っておくべきでした」とコメントした。

宮岸氏による「InDesign CS5」のデモ。松永さんの作った作品をページ上にレイアウトしていく

「InDesign CS5」を使ってFlash形式(SWF)で書き出すと、「インタラクティブなページめくり効果」を表現できる

最後に、これから就職活動を本格的に行なう全国の美大生にアドバイスを求められると、松永さんは「作ったポートフォリオは家族でも友だちでもいいので、多くの人に見せることが重要です。なんらかの反応が返ってくるので、とても参考になります。それと、就職活動は辛いです。そんな辛いときにグチを語り合える仲間がいることも大事。本音を言い合える友人がいるといいですね」と語った。中川氏も「就職活動にポートフォリオを使えるのは美大生の特権です。自分がどんな人間なのかを語ってくれるので、エントリーシートよりも強力な武器。少しでもいいポートフォリオを作って就職活動に挑んでほしい」と補足した。

なお、東京 表参道のstation 5では、6月16日にもポートフォリオに関するセミナーを開催予定だ。詳しい情報はこちら。

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