第8章 Windows 8に関するその他の機能とまとめ - 気になる点もあるWindows 8の日本語入力環境
我々日本人は2バイト言語を使用する民族のため、日本語を入力するIME(Input Method Editor)は欠かせない機能となる。MS-DOS時代は各ソフトウェアベンダーが競い合い、さまざまなIME(当時はFEP:FrontEnd Processorと呼称)がしのぎを削り合っていた。その中からMicrosoftは、エー・アイ・ソフトが開発した「WX2 for Windows」を選び、OEM版をWindows 3.1に搭載した。これが初代MS-IMEとなる。MS-IMEのバージョンアップにおける紆余曲折は割愛するが、Windows 8ではバージョン15にあたる「Microsoft IME 2012(以下、MS-IME 2012)」が搭載されている(図579)。
MS-IME 2012自体の性能に関しては特に意見はないものの、問題となるのがMicrosoft Designスタイルとデスクトップでの使用感覚である。Windowsストアアプリ使用時にMS-IME 2012が有効になっているか否か確認できないが、デスクトップを最初に起動した時点でMS-IME 2012の入力モードは「ひらがな」。そのため、ファイル名を指定して実行などからコマンドを直接指定する際は、一度入力形式を切り替えなければならない。だが、そのままコマンドプロンプトなどを起動すると、MS-IMEの入力モードが引き継がれてしまうのだ(図580~581)。
この問題は、コントロールパネルの「言語」を起動し、ナビゲーションウィンドウにある<詳細設定>をクリック。「入力方式の切り替え」セクションにある<アプリウィンドウごとに異なる入力方式を設定する>にチェックを入れることで回避可能だ。Windows 8各プレビュー版を完全検証したわけではないが、プレビュー版使用時にこのようなトラブルに見舞われることはなかったことを踏まえると、RTM版に至る際の改変で新たに発生したトラブルかもしれない(図582)。
その一方でWindows 8側の問題ではないが、使用していて困るのがMS-IME 2012を捨てられない点だ。Windows 7では、異なるIMEをインストールすることでMS-IMEを削除できたが、Windows 8は削除できなくなっている。これは後から導入したサードパーティ製IMEがデスクトップだけをサポートし、Microsoft Designスタイルで使用できないためだと思われる。
個人的にはサードパーティ製IMEのバージョンアップを早く望みたいところだが、執筆時点では2012年8月末に公開された「Google IME」の開発版(バージョン1.6.1187.10x)もWindows 8のMicrosoft Designスタイルには未対応だ(図583~584)。
また、複数のIMEをWindows 8にインストールしている場合、[Win]+[スペース]キーでIMEの切り替えが可能だが、筆者の使い方が悪いのか、何らかの拍子に同ショートカットキーを押してしまい、入力がMS-IME 2012に切り替わってしまう。この件でWindows 8を非難するのはお門違いだが、同ショートカットキーを無効にするオプションがあれば……と悔やむこともしばしばだ。MS-IME 2012で問題ない方は別だが、特定のIMEにこだわる方にとって現時点のWindows 8は、日本語文書作成環境としては、いくつかの問題があることを覚えておいてほしい。