第7章 Windows 8の機能とソフトウェア - Windows 8でも提供される「Windows Essential 2012」 その1
Microsoftは、以前からリリースしてきた「Windows Live Essentials」をWindows 8向けにも用意した。そもそも「Windows Live」は、それまでWindows OSにバンドルしていたOutlook Expressといったインターネット系ツールをOS本体から切り離し、各ツールをひとまとめにして配布するブランドとして独立させたものだ。その理由として、「インターネット系ツールの開発スパンとOSのそれとが合致せず、日々進化するインターネットのトレンドに追従できないから」だと、当時の関係者は述べていた。
詳しい時期は覚えていないが、いつの頃からか「Windows Live Essentials」に改称し、ファーストバージョンであるWAVE 1(Windows Liveではバージョン番号ではなく、WAVE 1、WAVE 2と数えている)は「Windows Live Dashboard」という名称が用いられている。2007年5月頃にはWAVE 2となる「Windows Live Installer」をリリースしているが、日本国内では前述の「Windows Liveおすすめパック」から「Windows Live Essentials」に直接改称したように記憶している。
その後のWindows Live Essentialsは、「Windowsムービーメーカー(ベータ版)」などをパッケージングした「Windows Live Essentials 2009(WAVE 3)」を2008年10月にリリースし、同年12月にはベータリフレッシュ版をリリース。その後パッケージに含まれるソフトウェアを個別にアップデートしていったが、2010年9月にはWAVE 4に相当する現在の「Windows Live Essentials 2011」をリリースした。そして、WAVE 5にあたる「Windows Essentials 2012」の登場に至る。
この名称で気になるのが、"Live"の文字が削られている点。Windows LiveグループバイスプレジデントChris Jones(クリス・ジョンズ)氏の言葉を借りると、Windows Liveブランドで展開している多くのサービスがWindows 8と融合することにより、同ブランドは発展的解消に至ったのである。
「Windows Essentials 2012」は、「Microsoft SkyDrive」「Microsoftフォト ギャラリー」「Microsoftムービーメーカー」「Microsoftメールデスクトップ」「Microsoft Writer」「Windows Live Messenger」で構成されている。再び各アプリケーションの呼称について触れるが、2012年8月にリリースされた時点では「Windows~」と従来の呼称が用いられていたが、2012年8月時点のマイクロソフトサービスアグリーメントを確認すると上記の名称が用いられていた。そのため本稿でも同じ表記を用いることにした(図558~560)。
気になるのは「Windows Live Messenger」のみ"Live"の単語が残されている点である。同社は2011年にP2P技術を利用したコミュニケーション系アプリケーションをリリースしていたSkypeを買収。現在同社はビジネスユーザー向けに、VoIP通話やオンライン会議を実現するMicrosoft Lyncを用意している。推測の域を超えないが、今後同社はSkypeをコンシューマー向けコミュニケーション系アプリケーションに位置付け、Windows Live Messengerはサービスを終えるのかもしれない。
Windows Essentials 2012の構成は前述のとおり、六つのアプリケーションで構成されている。Windows 7でWindows Live Essentials 2012を使ってきた方からすると、SkyDriveの存在が目新しいだろう。以前から単独で公開されていたが、Windows Essentials 2012に含まれたことでようやく"ベータ"の文字が取れた。SkyDriveは、Web上の同サービスとファイル同期を行うアプリケーションだが、新しいステータスウィンドウを追加し、未同期のファイル数やメガバイト数、最終更新時間を一目で把握しやすくなっている。また、通知領域のアイコンを右クリックした際に表示されるメニューや設定ダイアログに、問題発生時のログ情報を表示する項目やMicrosoftへ自動送信する項目が追加された(図561~562)。
大きな変化が加わったのは「Microsoftフォトギャラリー」と「Microsoftムービーメーカー」の二つ。前者は7枚以上の画像ファイルを対象に、自動コラージュを行う「Auto Collage」機能を搭載した。作成する画像ファイルサイズを事前に選択し、対象となる画像ファイルを選択してボタンをクリックすれば、コラージュ画像が作成される。また、Microsoftムービーメーカーとの共通改良点として、画像や動画のアップロード先にViemoが追加された(図563~564)。