第4章 Windows 8のWindowsストアアプリ - アドレス帳にSNS機能を加えた「People」と「メッセージング」

Windows OSにOutlook Expressが搭載された当初、相手の電子メールを管理するために「アドレス帳」というツールが用意されている。マイナーチェンジを繰り返しながら単独のツールとして使われてきたが、Windows Vistaから拡張子「.contact」を持つアドレス帳ファイルとして管理されるようになった。数百件ものアドレスを管理する場合、同ファイルも同じだけ膨れあがるため、この変更には賛否両論があったように記憶している。この仕様変更は最終的に破棄されたWinFSに対する名残と思われるが、そのままWindows 7にも受け継がれた(図224~225)。

図224 Windows 3.1上で稼働する「アドレス帳」

図225 Windows 7の「アドレス帳」フォルダー

その一方で個人が単独のコンピューターだけでなく、スマートフォンなど複数のデバイスを扱うようになった状況と、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及を踏まえた結果、「People」というWindowsストアアプリが生まれた。「メール」と同じように「Hotmail(Hotmail.com/Outlook.com/live.com/MSN)」「Exchange(Exchangeサーバー/Office 365/Outlook)」「Google(Google+)」に加え、「Facebook」「LinkedIn」「Twitter」といったSNSやミニブログをサポート。電子メールではなくSNS経由で連絡を取り合うユーザーが増えたことを踏まえた結果だろう(図226)。

図226 「People」のメイン画面。登録したアカウントを元に連絡先が列挙される

「People」を起動すると、TwitterやFacebookなど有効にしたアカウントで登録しているユーザーが列挙され、各人の発言を「更新情報」として確認できる。各ユーザーの設定画面からは、「お気に入り」に登録して「People」の先頭画面に並べたり、スタート画面にピン留めし、ライブタイルとして更新情報を確認することも可能だ。また、つぶやきのリツイートや返信、Facebookの近況更新機能も備わっており、単独で見るとSNS/ミニブログ用ツールという側面が大きい(図227~228)。

図227 各人の発言は「更新情報」として閲覧できる

図228 自身の発言も確認できる。ここからのつぶやきや更新も可能

「メール」の節で述べたとおり、各ユーザーの設定情報を連絡先として使用できるが、事前に電子メールアドレスの登録を行う必要がある。TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)機能は確認できなかったが、Facebookのメッセージは後述するWindowsストアアプリ「メッセージング」から送信可能。

Windows 8 Release Previewで本アプリケーションを確認した際、"TwitterとFacebookの両方にいる同一人物が並ぶのは使いにくい"と感じたが、RTM版では新たに<リンク>ボタンを用意している。この機能を使用することで、TwitterやFacebookといった異なるサービス上にいる同一人物を一つの連絡先として管理することが可能になった(図229~234)。

図229 ここに登録した電子メールアドレスは「メール」で使用可能

図230 連絡先を開き、アプリバーの<リンク>ボタンをクリック

図231 リンクページにある「連絡先の選択」をクリックする

図232 リンクするユーザーの選択をうながされるので、ユーザーを選択してから<追加>ボタンをクリック

図233 これで設定完了。アプリバーの<保存>ボタンをクリックする

図234 これでFacebookとTwitterにいるユーザーのリンクが完了した

「アドレス帳」というジャンル自体が既に完成の域に達している現状を踏まえれば、コミュニケーションツールの主流となりつつあるSNSやミニブログと連動するのは自然の流れだろう。必ずしも万人が必要とするツールではないものの、複数のSNSやミニブログの情報を一括管理できる点は評価に値する。

もう一方のコミュニケーションツールとして用意されたのが「メッセージング」。Windows Live Messengerの代替機能となるWindowsストアアプリだ。同様にMicrosoftアカウント経由でメッセージの送受信を行うが、その他のサポートアカウントはFacebookのみ。TwitterのDM機能もこちらで使用できれば便利なのだが、アカウントの追加画面には「このアプリで使えるアカウントはすべて追加済みです」というあっさりしたメッセージが現れるのみ(図235~236)。

図235 Windows Live Messengerの代替機能となる「メッセージング」

図236 使用できるアカウントはMicrosoftアカウントとFacebookのみ

相手がオンラインの場合は黄緑色の印がユーザー名の先頭やアイコンに付き、メッセージのやり取りを行えるが、機能的にはいくつか気になる点がある。Windows Live Messengerからメッセージを送信してみたが、ビデオ通話は使用できずビデオメールを送信する項目は現れるが、送信することはできなかった。また、Microsoftアカウント経由でも「メッセージング」側の問題だが、ファイルの送信も不可能だ(図237~238)。

図237 ユーザー別にメッセージが表示され、オンラインユーザーには黄緑色の印が付く

図238 Windows Live Messenger 2012のコンテキストメニュー。<ビデオメールの送信>はあるものの「メッセージング」で受信できなかった

もう一つの気になる点はステータス設定。Windows Live Messengerではオンライン/オフラインに加えて、"取り込み中"や"退席中"といったステータスが用意されていたため、どのタイミングでメッセージを送信してよいか、わかりやすかった。しかし「メッセージング」には、オンライン/オフラインの二種類しか用意されていないため、相手の状態を推測して行動することができないのである(図239~240)。

図239 同じくWindows Live Messenger 2012のステータスを制御するメニュー

図240 「メッセージング」では、オンライン/オフラインの切り替えしかできない

ビデオ通話はMicrosoftが2011年に買収したSkypeを使用し、メッセージ周りは「メッセージング」をアンインストールして、Windows Live Messenger 2012をデスクトップから使用した方が自然かもしれない。