第2章 Windows 8のインストール - Windows 8のアップグレードインストール: Windows 7編

以前のWindows XPやWindows Vista、Windows 7からWindows 8へアップグレードするユーザーを踏まえ、アップグレードインストールの手順も追いかけてみる。その前にご覧いただきたいのが、以前のWindows OSからWindows 8へのアップグレードパスだ。アップグレードプロセスの差異は三段階にわかれ、サポートポイントとなるのが「アプリケーション」「Windowsの設定」「ユーザーアカウントおよび個人用ファイル」の三種類(図074)。

図074 Windows 8へのアップグレードパス

「Windowsの設定」は、コンピューターの簡単操作やデスクトップの背景、インターネットのお気に入りと履歴などのWindows OSの設定を保持。そもそもOSの内容が異なるため、すべてのデータが保持されるわけでははい。「個人用ファイル」は、ドキュメントフォルダーやデスクトップなど、ユーザーフォルダー下で管理されている各フォルダーを対象としている。

「アプリケーション」は、文字どおりProgram Filesフォルダーにインストールしたアプリケーションを保持するというもの。Windows 8と互換性のある場合はそのまま使用できるが、再インストールが必要な場合もある。

アップグレードパスに関しては、エディションによってアップグレード先が異なるものの、Windows 7からWindows 8へアップグレードすること自体は可能だ。ポイントはWindows Vista以前。Windows Vista Service Pack 1以降であれば、アプリケーションは破棄されるもののWindowsの設定やユーザーアカウント関連は維持。しかし、Service Pack未適用のWindows VistaやWindows XPはユーザーアカウントおよび個人ファイルの維持にとどまっている。

筆者の私感だが、アップグレードインストールは新規インストールと比較すれば、Windows OSの再設定やアプリケーションの再インストールなどの手間が省け、時間短縮となるのは大きなメリットだ。しかし、過去のアップグレードインストールを踏まえると、不要な設定情報を参照し、描画がおかしくなるといったケースが多く見られてきた。

このことを踏まえ、Windows 8でもアップグレードを潤滑に進めるための「Windows 8 Upgrade Advisor」を用意した。もっとも、従来のように単独ツールとしてではなく、Windows 8 Upgrade AdvisorとWindows転送ツールがWindows 8のインストーラーに統合された状態で提供される。ネット経由のアップグレードは、ユーザーが使用するWindows OSのバージョンに合わせ、Windows 8 Upgrade Assistantがワンステップずつインストール手順を指示してくれるそうだ(図075)。

図075 Windows 8の公式ブログに掲載された「Windows 8 Upgrade Advisor」の画像

それでは、Windows 7 Ultimateをベースに、Windows 8 Proへのアップグレードインストールを実行する。基本的な流れは従来と同じく、Setup.exeをWindows 7上で実行すると起動するセットアップファイルがウィザード形式で進むので、画面の指示に従って進めればよい。ポイントは前述した引き継ぎ項目。対応するすべての項目を対象とする<Windowsの設定、個人用ファイル、アプリを引き継ぐ>や、<個人用ファイルのみ引き継ぐ>、<何も引き継がない>を選択しなければならない(図076~081)。

図076 メディアを挿入し、セットアッププログラムを実行すると、自身の展開処理などが始まる

図077 「Windows 8のセットアップ」ダイアログが起動し、更新プログラムの取得選択をうながされる。通常は<オンラインで今すぐ更新プログラムをインストールする>を選択した状態で<次へ>ボタンをクリック

図078 更新プログラムが存在する場合はダウンロードおよび展開を経てから、コンピューターの状態をチェックする

図079 Windows 8のプロダクトキー入力をうながされるので、25桁の英数字を間違えなく入力し、<次へ>ボタンをクリック

図080 Windows 8のライセンス条項が表示されるので、内容を確認。同意できるようであれば<同意します>をクリックしてチェックを入れてから、<次へ>ボタンをクリック

図081 アップグレードの方法選択をうながされる。特に問題がなければ<Windowsの設定、個人用ファイル、アプリを引き継ぐ>を選択した状態で<次へ>ボタンをクリック

それぞれの項目名で容易に想像できると思うが、最後の<何も引き継がない>を選択した場合は、すべてを削除し、Windows 7をWindows 8に置き換える処理が行われる。なお、個人用ファイルは「Windows.old」フォルダーに移動するが、USB-HDDなど外部デバイスに事前待避しておくのがベストだろう。なお、指紋リーダーなどのバイオ認証でサインイン(ログオン)している場合、正しく継承されない場合があるので、現在設定しているパスワードの確認を忘れずに行おう。

アップグレードインストールは新規インストールと大差ないものの、いくつか異なる点を確認できた。多くの設定が引き継がれるためか、コンピューター名の設定やネットワーク設定はスキップされている。また、Windows 7のアカウントもそのままローカルアカウントとして使用可能だった(図082~090)。

図082 これでアップグレードインストールの準備が完了した。<インストール>ボタンをクリックして、Windows 8へのアップグレードを開始する

図083 システムファイルの更新が行われる。既存環境を保持しながら処理しているせいか、新規インストールよりも遅く感じた

図084 システムファイルの更新を終えると、一度コンピューターが再起動する。ここでどのような処理が行われているか確認できないが、今回検証した環境ではさらに再起動が行われた

図085 再起動後にはハードウェアデバイスの認識や必要なファイルの展開が行われる。なお、今回もコンピューターは再起動する

図086 今度はユーザーアカウントの引き継ぎが始まる。この後の再起動が行われなかった

図087 新規インストール時と同じく配色の選択をうながされるが、コンピューター名は引き継がれるため、設定項目が用意されていない。設定後は<次へ>ボタンをクリック

図088 次にコンピューターやWindows 8の動作、セキュリティに関する設定をうながされる。基本的には新規インストールと同じため、ここでは割愛する

図089 Windows 7で使用していたアカウントのパスワード入力を求められる。テキストボックスにパスワードを入力して<次へ>ボタンをクリック

図090 Microsoftアカウントによるサインインを求められる。既に用意済みの場合はここでサインインしてもよい。なお、ローカルアカウントを使う場合は<スキップ>ボタンをクリック。続く処理は新規インストール時と同じなので割愛する

アップグレードインストール時の注意点はサードパーティ製デバイスドライバーが正しく継承されるか否か、という点。筆者が試した限りでは、大半のデバイスドライバーが自動的に導入されたが、Windows Update経由で後から導入するものもあったので、実行後はWindows Updateの確認をお勧めする(図091~092)。

図091 Windows 8へのアップグレードが完了した。新規インストール時とは異なり、いくつかの標準アプリケーションがスタート画面にピン留めされていた

図092 「Windows.old」フォルダーの内容。引き継がれなかったファイルが残されている