第1章 Windows 8への道 - Windows 8の新機能: その他の新機能
最後に他のカテゴライズに含まれない新機能を取り上げよう。Windows 7ではペイントやワードパッドにとどまっていたリボンUIだが、Windows 8ではエクスプローラーでも採用している。リボンUI自体の評価は後述するが、前述のソフトウェアやMicrosoft OfficeのリボンUIと同じく、折りたたむことができるため、想像以上に邪魔な存在にはなっていない。ただし、ショートカットキーがかなり変更されているため、キーボードから操作していたユーザーは慣れが必要である。
そのエクスプローラーが備える本来の役割、ファイル操作に関しても変更が加わった。それがファイルコピーマネージャーである。従来のコピーダイアログを拡充し、複数のファイルコピー処理を実行する際は、同マネージャーで管理される仕組みに変更。各処理を一時停止/再開/停止する機能を備えると同時に、タスクのデータ転送速度などがグラフなどを交えるようになった。この他にも、コピー先に重複するファイルが存在する際に現れるダイアログデザインも刷新。地味ながらも操作性を大きく向上させる機能だ(図032)。
アプリケーション面では、タスクマネージャーの刷新が印象的である。ユーザーニーズに求めて複雑化していったタスクマネージャーだが、Windows 8の同ツールはデザインを変更し、稼働中のプロセスだけを把握する簡素なモードと、CPUパワーやメモリ使用率などを詳しく知るための詳細モードを用意。個人的には、同一のコンピューターでアプリケーションの使用頻度を容易に確認できる<アプリ履歴>タブの存在は秀逸と感じた(図033)。
前述したMicrosoft Designスタイル関連ばかり注目されるWindows 8だが、ハードウェアを含めたシステム面の改善は意外と多い。例えばWindows Vistaから導入されたWDDM(Windows Display Driver Model)は、Windows 8に最適化されたバージョン1.2に更新。従来版であるバージョン1.0および1.1のスーパーセットにあたるWDDM 1.2では、パフォーマンスの向上はもちろん、立体的な3Dレンダリングやビデオ再生機能のサポートが行われる。
また、技術書によるとドライバーレベルでのプリエンプティブマルチタスク処理も可能だそうだ。エンドユーザーレベルの利点としては、動画サムネイルの作成スピードが向上し、動画ファイルの変換時間も短縮されている。
今後ユーザーが増えていく可能性が高いUSB 3.0のサポートも注目ポイントの一つ。従来のドライバースタックを強化する方法ではなく、新たに作り直しつつも約千種類に及ぶUSBデバイスの動作検証を実行。Windows 8のスリープおよびスリープ復帰の正常動作やストレステストなどが行われている。Windows 7ではベンダーが用意したデバイスドライバーを使用していたが、OSが標準サポートする安心感は大きいだろう。
厳密に言えば新機能ではないが、マルチディスプレイのサポート強化も大きなポイントだ。複数のディスプレイに異なる背景画像を表示させたり、サイズが異なる複数のディスプレイに巨大な背景画像を表示させたりすることが可能になっている。タスクバーもマルチディスプレイ環境に対応し、各環境に合わせた表示形態を用意。Windows XP時代にマルチディスプレイ環境で、タスクバーの表示にこだわっていた方には期待の新機能となるだろう(図034)。
システム面では、従来のVSS(Volume Shadow Copy Service:ボリュームシャドウコピーサービス)に取って代わり、新しいユーザーバックアップ機能として搭載されるファイル履歴や、ISO形式ファイル、VHD(Virtual Hard Disk)形式ファイルのサポートも興味深い。また、Windowsストアアプリや各新機能を支える技術としてメモリ消費量や起動時間の改善も大きな存在だ。