断言しよう。寝台列車は楽しい。そして便利だ。新幹線網が整備され、航空運賃は下がり、5,000円前後で泊まれるビジネスホテルが普及したって、寝台列車の魅力にはかなわない。今年に入って九州方面の寝台特急など、数々の列車は廃止されてしまった。しかし、いまも走り続けている寝台列車には生き残る価値がある。そこで、2009年現在の寝台列車を紹介しよう。

寝台特急「カシオペア」(上野 - 札幌)

寝台特急カシオペア(写真提供:JR東日本)

JR東日本が製造した最新型客車E26系を使用しており、銀色のボディは鉄道ファン、旅行ファンの憧れだ。本州内の機関車も白地にアクセントラインを入れた専用タイプとなる。客室はすべてA寝台2人用個室で構成されており、食堂車とラウンジカーを連結する。上野発は16:20だが、入線は45分前の15:35だから旅立ちの雰囲気もたっぷり楽しめる。札幌着は9:32で乗車時間は約17時間。上りもほぼ同じ時間帯を走る。

札幌行最後尾(上野行最前部)は展望車タイプの「カシオペアスイート」で、ツインベッドふたつ、リビングソファ、室内にトイレとシャワールームがある。「カシオペアスイート」にはメゾネットタイプもあり、こちらは1階が2ベッドの寝室、2階がリビングとなっている。「カシオペアデラックス」は平屋で広めのツインルーム。これらの車両には、室内にトイレとシャワールームがある。もっとも部屋数の多い「カシオペアツイン」は1階部屋タイプ、2階部屋タイプ、平屋タイプがある。各部屋にトイレがあるがシャワールームは共用だ。すべての部屋にテレビモニターがあり、ビデオ番組、BS放送を視聴できるほか、現在位置も確認できる。

食堂車は、夕食が予約制のフルコースまたは懐石料理。ディナー終了後は、予約無しで誰もが使えるパブタイムになる。朝は、予約不要の朝食(和食・洋食)を用意している。他にも無料のウェルカムドリンクやモーニングコーヒーのサービスがある。

また、札幌行最前部(上野行最後部)は乗客が自由に使えるラウンジカーになっている。札幌行は機関車と睨めっこだが、上野行の場合は最後部の眺望を楽しめる。

「カシオペアスイート」(左)は展望を独り占め。「ラウンジカー」(右)は乗客の誰もが利用できる(写真提供: JR東日本)

「カシオペア」列車データ
運行区間 下りは上野(16:20発) - 札幌(9:32着)、上りは札幌(17:12発) - 上野(9:38着)。車両が1編成しかないため、上野発は火、金、日曜、札幌発は月、水、土曜となる。ただし繁忙期は完全隔日運行となるため曜日が変わるので注意
設備 食堂車、ラウンジカー、シャワールーム、A寝台2人用個室「カシオペアスイート」「カシオペアデラックス」「カシオペアツイン」
運賃+料金(例) 上野 - 札幌間 88,920円(カシオペアスイート 2人分)、64,460円(カシオペアツイン 2人分)

寝台特急「トワイライトエクスプレス」(大阪 - 札幌)

寝台特急トワイライトエクスプレス(写真提供: JR西日本)

日本でもっとも長い距離を走り、もっとも長い所要時間となるリゾートタイプの寝台特急。客車はブルートレインブーム時代に製造された24系だ。機関車も客車と同じ色でコーディネートされている。外観は古いタイプで、国鉄全盛期時代の独特の風格がある。室内は大幅にリニューアルされており、豪華な2人用個室から、1人でも使える2段式寝台まで揃っていて、予算に応じて利用できる点でも人気がある。

カシオペアと同じく、札幌行の最後部車両には展望室タイプのスイートがある。2号車中央にもスイートがあり、こちらは平屋で広い。このほか、A寝台1人用個室、B寝台2人用個室、B寝台1人用個室、B寝台2段式がある。B寝台個室のうち「シングルツイン」は、補助ベッドを使って2人で利用可能。B寝台2段式の「Bコンパートメント」は、4人グループで使用する場合のみ個室として鍵を使用できる。シャワー・トイレはスイートとロイヤルに付属。それ以外のタイプを利用する乗客は、共用のトイレとシャワールームが利用できる。

食堂車のディナーはフランス料理のフルコース。部屋に懐石弁当のデリバリーも頼める。どちらもきっぷ購入時に予約が必要だ。翌朝の朝食は前日に食堂車で予約する。ディナータイムのあとのパブタイム、大阪出発後のランチタイムと、札幌出発後のティータイムは予約不要だ。

食堂車の隣のラウンジカーは、窓が大きく開放感がある。大きな窓ガラスが天井まで回り込み、サンルームのようだ。ラウンジのソファはすべて日本海側に向き、下り列車は海の夕景、上り列車は夜明けの淡い風景を眺められる。ここがトワイライトエクスプレスの名前の由来となっている。

優雅な「スイート」(左)、「サロンカー」(左)のシートはすべて日本海向き(写真提供: JR西日本)

「トワイライトエクスプレス」列車データ
運行区間 下りは大阪(12:03発) - 札幌(9:52着)、上りは札幌(14:05発) - 上野(12:52着)。大阪発は月・水・金・土曜、札幌発は火・木・土・日曜となる。ただし繁忙期は毎日運行される
設備 食堂車、ラウンジカー、シャワールーム、A寝台2人用個室「スイート」、A寝台1人用個室「ロイヤル」、B寝台2人用個室「ツイン」、B寝台1/2人用個室「シングルツイン」、B寝台個室「シングル」、B寝台二段式個室「Bコンパート」
運賃+料金(例) 大阪 - 札幌間 89,620円(スイート 2人分)、25,620円(B寝台二段式 1人分)

寝台特急「北斗星」(上野 - 札幌)

寝台特急北斗星(写真提供: JR東日本)

ブルートレインブームの面影を色濃く残した列車。上野 - 札幌間を毎日運行している。下りは「カシオペア」より3時間ほど遅い19:03に出発して、札幌には昼前に着く。上りはカシオペアより1時間遅く出て、上野には約10分後に着く。このダイヤによって、南東北 - 道南間を利用する人にも使いやすくなっている。

A寝台2人用個室、A寝台1人用個室、B寝台2人用個室、B寝台1人用個室、B寝台2段式、Bコンパートメントがあり、旅のスタイルや予算に応じて選択できる。B寝台2段式と同じ料金で利用できるB寝台1人用個室「ソロ」はお買い得だ。「カシオペア」が2人用個室だけなので、1人旅なら「北斗星」を利用することになるだろう。特にA寝台個室「ロイヤル」は室内も広くオススメ。補助ベッドを引き出せばダブルベッドになり、2人で利用する料金設定もある。

食堂車のディナータイムはフランス料理フルコースと懐石御膳。どちらも要予約。懐石御膳はA寝台個室にルームサービスも可能。ディナータイムのあとのパブタイムは予約不要。朝食も予約不要で、和食と洋食の2種類がある。ロビーカーはB寝台1人用個室とシャワールームが併設されているため、カシオペアやトワイライトに比べると狭く、競争率が高い。

ゆったりくつろげるロビーカーを連結(写真提供: JR東日本)

「北斗星」列車データ
運行区間 下りは上野(19:03発) - 札幌(11:15着)、上りは札幌(17:12発) - 上野(9:38着)。毎日運行
設備 食堂車、ミニロビー、シャワールーム、A寝台2人用個室「ツインデラックス」、A寝台1人用個室「ロイヤル」、B寝台2人用個室「デュエット」、B寝台個室「ソロ」、B寝台二段式個室「Bコンパート」、B寝台二段式
運賃+料金(例) 上野 - 札幌間64,640円(ツインデラックス 2人分)、25,270円(B寝台二段式 1人分)