3月18日、神奈川県の根岸駅から盛岡駅へ向けて、機関車1両、タンク貨車18両の燃料輸送列車が仕立てられた。東北地方太平洋沖地震後、深刻な燃料不足に見舞われた東北地域を支援するためだ。最初の列車が輸送したガソリンと軽油は合計792KLで、大型タンクローリー車約26台分にあたる。この列車はテレビや新聞で報じられた。闇夜に動く黒い列車は異様ではあるが、復興へ向けた力強さを感じさせてくれた。

復興用燃料輸送列車は1日2便が設定され、震災前に仙台港から陸揚げされた燃料とほぼ同じ供給体制を整えた。また、25日からは郡山へ向けた便も動き出している。普段は脚光を浴びることのないタンク貨車をこの期に知った方も多いだろう。

黒いタンクはタキ38000形

米軍機のジェット燃料輸送にも使われるタキ38000形

3月18日に運行が始まった復興向け燃料輸送列車。この列車に使われた貨車はタキ38000形という。1977年から2年間で140両が製造された。前後に2軸の台車を1つずつ置き、その上に台枠を載せ、その上に中央を太くしたタンクが搭載されている。搭載量は36t、搭載可能容積は約50KLだ。これは最大級のタンクローリー(28t,30kl)約1.3~1.7倍にあたる。

タキ38000形はガソリン専用タンク車として製造された。時速75kmの速度で運行でき、製造当時の国鉄が運行していたほぼすべての路線で運行可能だった。しかし、最近は最高速度を高めに設定された新型車両がメインとなっているようだ。タキ38000形の一部は、鶴見の米軍施設と横田基地を結ぶジェット燃料輸送列車に転用されている。

緑色のタンクはタキ1000形

根岸線根岸駅に留置されたタキ1000形、奥の青い屋根がJX日鉱日石エネルギー根岸製油所

関東以北でよく見かける緑色のタンク貨車はタキ1000形という。1993年から現在まで約900両が製造され、ガソリン向け主力車両として製造が続いている。大所帯の主力車だけに、東北地方太平洋沖地震で多数の被害が出たようで、しばらくは生産が続くと思われる。搭載量は45t、搭載可能容積は約60KLだ。タキ38000形よりひと回り大きく、タンク下部が台枠を兼ねていて、台車の直上にタンクが載っているように見える。

タキ1000形は、タンク貨物列車の速度向上を目的として開発されたため、時速95kmの速度で運行できる。ただし、大型化して積荷の重量も増したため、走行可能な路線が重量級列車向けに対策された区間に限られている。積荷を減らすなどで軽量化すれば走行できる路線もあり、復興向け燃料輸送列車にも登用されたようだ。

タンク貨車の所有者はJR貨物ではない

鉄道車両は鉄道会社が保有している。貨物列車においては、コンテナ貨車やコンテナそのものはJR貨物が所有している。コンテナを使う荷主はJR貨物からコンテナを借りるという契約になる。ただし、積荷が限定され、荷主も固定されるような場合は、荷主が貨車を保有する場合が多い。石油類用のタンク貨車については、日本石油輸送と日本オイルターミナルが所有する車両が多い。タキ1000形は緑色と青色があり、緑色が日本石油輸送の所有車、青色が日本オイルターミナルの所有車である。