電車同士や機関車と客車、貨車を連結する器具といえば「連結器」。寝台特急やSL列車など、機関車が牽引する列車に乗ると機関車と客車の連結、切り離しを見ようと乗客が集まる。大きな機械同士がつながる場面に興味を持つ人は多い。その関心はアニメのロボット合体場面に通じるかもしれない。ところで、日本の鉄道車両の連結器は大きく分けて2種類あることをご存じだろうか。

神戸電鉄の1000系電車。それぞれの連結器が違う珍しい形式だ

連結器の真似をして遊んだことがある人は、手をグーにして「連結だ! ガッチャーン! 」と真似をすることがあったはずだ。鉄道車両の連結器は「グー」に似ている。アニメ『銀河鉄道999』でも、機関車と客車の連結場面でたびたび登場しているし、連結器といえば「グー型」を思い浮かべる人が多いだろう。

この「グー型」の連結器は「自動連結器」と呼ばれている。なにが「自動」かというと、連結器同士をくっつけるだけで自動的に連結できるから。連結を解除するときは付属の「てこ」を操作すると簡単に切り離せる。

24系客車の自動連結器

EF81形電気機関車と連結したところ。連結器の他にブレーキ管などの配線を行う

日本で自動連結器が普及する前は、車両同士の鉤(フック)に、締め付け機構のある鉄の輪(リンク)をひっかける「ねじ式連結器」が使われていた。つまり手動だったわけだ。シンプルな機構だが作業時の事故が多く、自動連結器が開発されると淘汰されていった。自動連結器は世界中のほとんどの鉄道で主流となっており、日本の鉄道も多くの車両が自動連結器を採用している。機関車や客車、貨物列車、気動車、電車のほとんどが自動連結器だ。連結部分の隙間を減らすよう改良された「密着自動連結器」が主流である。

電車に増えている「デコボコ型」の密着式連結器

一方、JRや大手私鉄の電車では、平面タイプの連結器が採用されている。平面の片側に棒が突きだしており、もう片側に穴が空いている。デコな部分とボコな部分を併せ持つ「デコボコ型」だ。これは「密着式連結器」という。連結器同士を向かい合わせると、互いの棒が互いの穴に挿入されて、内部でロックされる。連結状態は平面をピッタリ合わせたように見える。だから「密着」というわけだ。

密着連結器を搭載した東武鉄道6050系電車

密着連結器の特長は、連結器同士の遊びが無いこと。そのため列車の前後の揺れがほぼ無くなるという。また、棒の部分にブレーキ用の空気管などを仕込めるため、自動連結器よりも連結作業が軽減される。しかし、機構が複雑なため、強度は自動連結器ほどではないという。したがって客車列車や貨車には向かない。機関車部分の連結器には、すべての客車や貨車の荷重がかかるためだ。

電車は動力を分散しているため、1つの連結器に荷重が偏らない。そこで電車は密着式連結器の採用が増えている。行き先別に編成を分割したり、多客期に増結したりと、電車を柔軟に運用できるというわけだ。

密着連結器を連結したところ。密着連結器の下にある箱は制御信号用の電気配線をつなぐための「電気連結器」

このほかに特殊な連結器として、編成を固定している電車の中間車には「棒連結器」が採用されている。2つの車両を棒と継ぎ手のみでつないだシンプルな方式だ。棒連結器は車両基地以外で連結、解放を操作できないが、コストは低く、強度は大きいという。