ネオ・ルネッサンス様式のレトロな木造駅舎で知られ、国の重要文化財にも指定されたJR門司港駅の駅舎が、今年9月末より駅舎保存修理工事に入りました。工事期間は2018年3月までの予定で、約5年半に及ぶ長期間の工事となるようです。

駅舎保存修理工事に入る前の門司港駅。多くの観光客が訪れていた

門司港駅の現駅舎が竣工したのは1914(大正3)年。同じ年に東京駅丸の内駅舎も竣工しています。今年、東京駅丸の内駅舎は保存・復原工事を終えましたが、それとほぼ時を同じくして門司港駅が工事に入ったことに、なんとなく不思議な縁を感じてしまいます。

「もうすぐ見られなくなる門司港駅の駅舎を、いま一度見ておきたい」、そんな思いで、筆者は今年9月、門司港駅を訪れました。過去に何度も訪問した門司港駅ですが、前回の訪問からは約7年ぶり。自動改札機が「SUGOCA」対応となっていることに多少の驚きを感じつつ、レトロな雰囲気を残す門司港駅のホームや駅舎に懐かしいものを感じました。

駅舎の隅々までこだわりを感じさせるデザインだが、竣工から100年近く経つだけに傷みも目立つ

この駅は関門トンネルの開通まで「門司駅」を名乗り、関門連絡船と接続する九州の玄関口として栄えました。駅前には、明治から大正にかけて商社や銀行として建てられた近代建築が多く残っています。駅前にある九州鉄道記念館の本館もまた、明治時代に旧九州鉄道本社社屋として建築されたそう。近年、駅を中心とした街並みが注目され、「門司港レトロ」として観光地化されると、多くの観光客が訪れるようになりました。

関門トンネルの開通や山陽新幹線の開業などで「九州の玄関口」の座を譲った門司港駅ですが、いまも鹿児島本線や日豊本線の電車が発着し、駅に隣接して車両基地もあり、九州の鉄道において重要な役目を担っています。門司港駅のレトロなホームと、JR九州らしい洗練されたデザインの813系や811系との対比は、いつ来て見ても楽しいものです。朝と夜には、787系・783系を使用する特急「きらめき」も発着するようになりました。

一方、国鉄時代から活躍する近郊形電車・415系は、下関駅発着の電車を除き、北九州地区でも徐々にその数を減らしている様子。門司港駅では定期運用に就く姿を見られず、車両基地で休んでいる編成を見かけただけでした。

駅に隣接する車両基地には415系の姿も

九州鉄道記念館にはSLのほか、電気機関車やボンネット型車両も展示

門司港レトロ観光列車「潮風号」。今年の定期運行は11月25日まで

門司港駅周辺は近代建築が多く、「門司港レトロ」として観光地化している

門司港駅の美しいデザインの駅舎は何時間いても見飽きることはありませんが、それ以外にも、改札口の正面に設置された「0哩標」、関門連絡船と接続していた頃をしのばせる通路など、鉄道の歴史を感じさせる見所がたくさんあります。

この駅を好きな駅に挙げる人は多く、あのタモリさんも、「一番好きな駅は門司港駅」と明言しているそう。ちなみに、12月に審査結果が発表される予定の「門司港駅写真コンテスト」では、タモリさんが審査する「タモリ賞」も設けられるとのことです。

駅舎保存修理工事に入り、現在は仮囲いに覆われているという門司港駅ですが、12月1~2日の2日間に限り、駅全体を見られることになりました(本誌ニュースも参照)。来年から駅舎の解体も始まるだけに、現在の駅舎を記憶に留める貴重なチャンスとなるかもしれません。