本連載では、まだFXや先物取引を始めて間もない方や、現在勉強中という方を対象に、毎回、ある1つのテクニカル指標をピックアップし、知識編・実践編の2回に分けてご紹介していきます。知識編では、その指標の概要を解説し、値の求め方や一般的な使用方法をお伝えします。実践編では、システムトレードで活用できるよう、知識編でご紹介したテクニカル指標を用いたシステムトレードのプログラミングに挑戦していきます。

今回は、相場の方向やトレンドの強さに着目したトレンド系テクニカル指標の一つ、「DMI」をご紹介します。

DMI : 日経平均_日足チャート(1)

■指標解説

「DMI(Directional Movement Index)」は、一定期間内の変動値幅を参考に、現在のトレンドの勢いや相場の方向性を判断する分析指標です。日本語では"方向性指数"と訳されています。

RSI指標と同様、アメリカのJ. Wells Wilder氏によって考案された同指標は、一定期間の値幅変動に対する上昇幅と下降幅の割合から2つの指標「DM+」「DM-」を算出し、さらに、現在のトレンドの勢いを測る「ADX」指標を導き出します。DM+ とDM-は、それぞれ上昇・下降の可能性を示しており、DM+ がDM-を上抜けたときは上昇トレンド、逆は下降トレンドの始まりと判断します。また、ADX はトレンドの強弱を示しており、0 から 100 の間で上下します。一般的には、ADXが20 より下にあるときはトレンドが弱く、40 より大きいときトレンドが強いと判断されます。

■ラインの算出方法

<1>
Plus_DM = 当日の高値 - 前日の高値
Minus_DM = 前日の安値 - 当日の安値
<2>
Plus_DM > Minus_DM のとき Minus_DM = 0
Plus_DM < Minus_DM のとき Plus_DM = 0
Plus_DM = Minus_DM のとき Plus_DM = 0、Minus_DM = 0
Plus_DM ≦ 0 のとき Plus_DM = 0、 Minus_DM = 0
Minus_DM ≦ 0 のとき Plus_DM = 0、 Minus_DM = 0
<3>
TR(TrueRange) = 以下3つの内の最大値
・当日の高値 と 当日の安値 の 差
・当日の高値 と 前日の終値 の 差
・前日の終値 と 当日の安値 の 差
<4>
DMI+ = n日間のPlus_DMの累計 ÷ n日間のTRの累計 × 100
DMI- = n日間のMinus _DMの累計 ÷ n日間のTRの累計 × 100
<5>
ADX = {((DMI+)-(DMI-))の絶対値÷((DMI+)+(DMI-))} のn日平均

■売買への使用例

上述した通り、DM+ がDM-を上抜けたときは上昇トレンド、逆は下降トレンドの始まりと判断することが出来ます。その他には、ADX指標が高水準の場合、強いトレンドが形成されているとみなされ、また逆に下降しているときはトレンドが弱く、保ち合い相場とみなされるなど、トレンドを見極める上でADX指標を重要視することが多くなっています。DMI指標は、トレンドに沿った順張り手法や、保ち合いでの逆張り手法など、様々な手法で利用されています。

DMI : 日経平均日足チャート(2)

■「トレードシグナル」に用意されたDMI指標

ひまわり証券で提供しているシステムトレード用チャートツール「トレードシグナル」には、200を超えるテクニカル指標が搭載されています。上記でご紹介したDMI指標のほか、「トレードシグナル」には合わせて3種類のDMI関連指標が用意されています。

  1. ディレクショナル ムーブメント インデックス … 一般的なDMI指標のこと。
  2. ディレクショナル ムーブメント インデックスMA … 元データに単純移動平均を使用したもの。
  3. ディレクショナル ムーブメント オシレータ … DMI±差分をオシレーター化したもの。

DMI : 日経平均日足チャート(3)

次回「DMI 実践編」では、今回ご紹介した指標を用いて、システムトレードのプログラミングに挑戦していきます。

参考書籍・参考URL

・『テクニカル分析全集』(田中勝博/著 : 1998年6月)
ひまわり証券「FXテクニカル指標 活用と応用」
ひまわり証券「トレードシグナル 基本情報」

-「実践編」へ続く-