【連載】

超次元散歩倶楽部

1 呼吸の合わない風景

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主に建造物に付着する無用の長物こと「トマソン」という言葉、かつては一部の人にだけ知られるニッチな超芸術のひとつだったはずだが、主にネットでその概念が周知されるに従い、現在ではかなり広く知られる街角コレクションになったように思う。

今回、このトマソンにははるか及ばないが、きちんと使用できるのにどこか不便な街角のアレコレを3つ取り上げてみたい。

座れない椅子(撮影場所: 東京都台東区)

一方が座ると座れなくなる椅子。上野駅構内のホーム上待合室には共存できない椅子がある。

不備だ、設計ミスだ、と突っ込みを入れるのは簡単だが、そうした視線の中でも今日まで椅子としての機能を果たしているのだろう。優しい気持ちで見てあげたい。

街を見渡すと、2つのものの互いの呼吸が合わず残念ながら共存できていないという風景に時々出くわす。

あちらを停めるとこちらが出せない(撮影場所: 東京都港区)

車を停めると自転車が出せない駐車場兼駐輪場。

これが設計ミスでないのであれば、あるルールに基づき車と自転車がきちんと共存しているはずなのだが、いくら考えても答えが浮かばない。

仮に何かのミスだとしても、人ってのはうまく折り合いをつけて、こうした不都合を解決してしまうものだ。

どちらにしても、この駐車場が今どんなルールで運用されているのか想像するのはとても楽しい。

なぜか車止めにまで乗り上げて駐車している(撮影場所: 愛知県岡崎市)

駐車ラインと車止めが全くかみ合っていないこちらの駐車場。足並みが完全にズレており、案の定、利用者はラインをはみ出して駐車している(車止めにまで乗り上げているが)。

通しナンバーのはずの「102」のプレートが抜けていて、よく見るとそれをはがしたような跡もある。

推測するに、元々は異なるレイアウトだったものが、「狭い」という住民のリクエストに応える形でラインを広く引き直したのではないだろうか。

何気ない街中の風景も、重箱の隅をつつく気持ちでジッと観察してみると面白い。

非効率だったり、一見無駄に見えるものだったり、意味の見いだせないものたちも、なぜそうなったかを勝手に想像していけば街歩きは有意義なものになるのではないだろうか。

<著者プロフィール>
zukkini
1982年佐賀県生まれ。進学のため上京するも友達が全く出来ないことに絶望し、ネット上で日記を書き始めて15年。
現在は残飯系情報サイト「ハイエナズクラブ」を主催し、「オモコロ」のライターとしても活動中。
趣味は録画した「警察24時」を繰り返し観ること。

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インデックス

連載目次
第7回 扉をやめた扉
第6回 あきらめた肉体改造
第5回 駐車場を観察する
第4回 小さいものたち
第3回 公衆便所アート
第2回 階段の最期
第1回 呼吸の合わない風景

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