本連載第2回では、公立と私立の違いをご説明しました。今回はもう少し踏み込んで、志望校の決め方と、決定後にすべきことをお届けしたいと思います。
通える範囲にある小学校を調べる
名の通った超有名校以外にも、私立小学校はたくさんあります。まずは、ご自宅から通える範囲にある私立小学校を調べましょう。「お受験じょうほう」など、小学校受験に関する情報がまとめてあるサイトを使うと便利です。通学可能と思える場所にある学校はすべて、乗り継ぎの方法や駅からの徒歩時間を確認することをおすすめします。初めて聞く名前の学校でも、「設立経緯や教育理念を知り、実際見学してみたらとてもいい学校で家庭の方針と合うので目指したい」と思う可能性があるからです。
私立小学校の場合、「通える範囲」は目安として通学時間1時間以内と思ってください。居住区の指定がある訳ではないので厳密に1時間以内と決められているわけではありませんが、小学校1年生の子どもが道順を覚え、災害時対策もとれる距離となると、この程度となってきます。共働きの場合、お父さんやお母さんがお子さんと一緒に通勤・通学できるルートで探すというのも安心ですし、1つの選択肢ですね。
確かに、「近いから」「通いやすいから」といった理由で受験するのは志望動機として不十分です。しかし、現実的に通える学校であることを確かめることは、私立学校選びのスタートではあります。
なお、「たとえ現住所が遠くても合格した場合には通学可能な範囲に引っ越す! 」というケースは、その旨伝えれば考慮されますので、面接で伝えるか願書に記載するか、どちらかは必ずしてください。
宗教観と教育方針、進学先といった特色を把握
通える小学校を絞ったら、次はその学校の特色をよく確認します。私立小学校にはそれぞれ設立経緯があります。ほぼすべての小学校が現在はホームページを設けていて、学校ができたいきさつや創設者の思いなどを記載していますので、熟読します。創始者が書いた本が出版されている場合は、それも読みましょう。何を目指し、何を重んじているかがよくわかります。学校によってはホームページに進学先を掲載しているところもありますので、一貫校でない場合はそれも要確認です。
宗教に関してはキリスト教をベースにしている場合が多いですが、仏教や創始者の理念を色濃く出している学校もあります。洗礼を受けることや、敬虔な信者になることを求められることはほぼありません。しかし、学校によってはチャリティー活動に力を入れていたり、ミサへの積極参加を推奨したりしているところはあります。学校の特色は、学業以外の学校活動に反映されていますので、宗教観の強さや週末のイベント等もよく確認するとよいでしょう。
学校によっては、共働き家庭を考慮して入学式や運動会を週末に開催している学校もあります。ご家庭の生活リズムと照らし合わせると、通学イメージが掴みやすいかと思います。ただし、多くはないですがお母さんが働いていることを明確にNOと言っている学校もありますので注意が必要です。これに関してはホームページだけ確認するのは難しいので、受験する可能性を見いだすほど興味を持った場合、次のステップに進みます。
学校説明会やオープンスクールに参加
私立小学校は、それぞれの理念や方針に共感した生徒を望んでいますので、ご家庭と齟齬がなるべく生じないよう、校風を理解してもらう機会を設けています。学校説明会を校舎で行うことが多く、実際に施設を見て先生のお話を伺い、雰囲気を肌で感じることができます。「他の学校が第一志望だったのに、行ってみたら大ファンになった! 」という話もよく聞きますので、受験する前には必ず足を運ぶことをおすすめします。運動会やクリスマスミサを公開している学校もありますので、受験の1年以上前には参加できる行事をよく確認しましょう。
学校によっては入場の際に記名を義務付けており、受験面接の際に「何度イベントに参加されましたか」と聞かれ、どの程度本気で入学を希望しているのかを確認されることも少なくありません。イベントに参加した際の具体的な体験談を願書に盛り込むことも大切です。
実際足を運ぶことと同じくらいしておいていただきたいのは、在校生や卒業生に「どんな学校で、何がよかったのか」と話を聞くことです。親戚や知り合いにいる場合は機会を作りやすいかと思いますが、いない場合は通っている塾の先生や幼稚園の先生に引き合わせてもらえる可能性がないか相談してみてください。6年間籍を置いていた方に聞く体験談は、何にも増して臨場感があり、学校生活を垣間見ることができると思います。
次回は、ご家庭でご両親がすべき準備と心構えについてです。
※画像は本文と関係ありません。
著者プロフィール
小学校受験向け幼児教室「クラリティー・キッズ」主宰
五島 真知子
自身が小学校受験を経験し、大学までの私立一貫校を卒業。
大学時代に縁あって小学校受験塾(クラリティー・キッズ前身)で4年間アルバイトとして従事。
大学卒業後は伊藤忠商事に総合職として約11年間勤務するも、結婚・出産・事故による負傷を経て退職。学生時代にアルバイトをした小学校受験塾の前オーナー引退に際して事業を継承し、現職。
何事にも果敢に挑戦する意欲を持ち、目標を達成する為の努力を楽しむ心意気を持った輝く子どもを育成するため、教材作成から指導まで広範囲の指導を行う。
※2015年度合格実績(順不同)
慶応義塾幼稚舎・慶応義塾横浜初等部・立教小学校・早稲田実業学校初等部・東洋英和女学院小学部・聖心女子学院初等科・東京女学館小学校・東京都市大学付属小学校・洗足学園小学校・カリタス小学校・精華小学校・目黒星美学園小学校・桐蔭学園小学部