ほぼ別世界講座(50) 暮らしにも刺激的!? 建築・デザイン専門の「ギャラリー・間」

「建築とデザインの専門ギャラリー」と聞くと、「ちょっと自分には関係ないかな」と思う人もいるかもしれません。しかし、このギャラリーではとっても刺激的な出会いが待っています。何よりも入場無料。そして、建築やデザインなどに関する専門書店もあり、こちらもおすすめ。ギャラリーと書店を運営しているのは「TOTO」。そう、あの「TOTO」です。

新進気鋭のタンザニア人建築家、初の日本展開催中

乃木坂駅3番出口を上がってすぐの場所にビルは建っている

東京ミッドタウンのほど近く、東京メトロ乃木坂駅のすぐそばのTOTO乃木坂ビル3階に、小ぢんまりとしつつも、ユニークな空間の「ギャラリー・間」はあります。

ただ今開催されているのは「デイヴィッド・アジャイ展」(9月18日まで)。1966年、タンザニアのダルエスサラームに生まれたアジャイ氏は、ロンドンで建築学を学び、京都にも留学しています。現在はハーバード大学などで教鞭を執りつつ、世界的に活躍しています。

まず目についたのは、楕円形の不思議な建物の模型。「スクリラ」という仮設パヴィリオンとの説明で、パネルの写真を眺めていると、この中に実際に入ってみたい気分に。

中庭に出ると、4階への階段があり、上の会場に移ると、こちらにもおもしろい建物の模型が並んでいます。印象的、というか衝撃的といってもいい建物は「モスクワ経営管理大学院 SKOLKOVO」。2006年に着工され、2010年秋に完成予定という建物の姿は、オブジェっぽいというか、積み木っぽいというか……、これが実際にどのようなものなのか、現地に行って確かめたくなります。

アジャイ氏は建築への「光」の活用をテーマとしているとのことで、それはなんとなく理解できます。また、氏がアフリカ出身というのも、作品に何らかの影響を与えているような気がしました。この展覧会を観るだけでも、「ギャラリー・間」を訪ねる価値ありです。


3階第1会場。第2会場とあわせて、ちょうどよい広さの空間となっている	「スクリラ」と実際に建てられていた様子のパネル。木材を垂直に重ね継ぎした独特な雰囲気のある空間だ

あの『建築MAP』シリーズも出版

「ギャラリー・間」が開設されたのは1985年。その名称は「人間・時間・空間それぞれの間合いという日本特有の概念」を表していて、TOTOの社会貢献活動の柱となることを目指しています。安藤忠雄をはじめとした建築家が運営委員となっており、国内外の建築家やデザイナーを取り上げた質の高い展覧会を開催してきました。

これまでののべ来館者は75万人ほど。学生や建築関係者などが多いそうですが、特に建築やデザインに関係がない人にも興味深い場所であることに違いはありません。暮らしに深く関わるこれらの分野は、やはり人々の好奇心をくすぐってくれます。もしかしたら、突然、何かのアイデアがひらめいたりするかも。

展覧会同様に刺激的なのは2階の「Bookshop TOTO」です。建築、デザイン関連の書籍や雑誌が充実しているだけではなく、図書館コーナーもあり雑誌のバックナンバーなどの閲覧ができます。

ここに並んでいる本は、TOTO出版の出版物。あまり馴染みがないという本が多いかもしれませんが、大人気の『建築MAP』シリーズを出版しているのは、TOTO出版です。その他の本も、じっくり目を通してみると思わず魅かれてしまうことでしょう。たとえ家を建てる予定がなくても、「こんな家いいなぁ」とか思いながらページをめくってしまいます。

お店の人におすすめを聞くと、『中村好文　普通の住宅、普通の別荘』を紹介してくれました。著者の中村氏は建築家・家具デザイナー。新潮社から出ている『住宅巡礼』『住宅読本』などでご存知の方もいるかもしれません。中村氏が手がけた建物は、どれも地味だけれど気取りのない「普通」のものばかり。ページをめくるたびに広がる温もりに、笑顔がこぼれてしまいます。


「モスクワ経営管理大学院SKOLKOVO」は、独創的な発想にあふれている	ロンドンの公園に設けられた「シャダ・パヴィリオン」。木漏れ日を再現した屋根が特徴的


3階から4階への階段が設置された中庭もギャラリーのひとつの顔となっている	書店奥に設けられた図書館コーナー。ゆっくりと閲覧できるようになっている


ふだんなかなか出合う機会のない書籍や雑誌もあるので、じっくりと眺めてみたい	手前の『建築MAP』シリーズは、街に点在する貴重な建物やユニークな建築物を網羅した傑作本としてファンが多い

中村氏の建物や空間へのまなざしがよく伝わってくる文章も秀逸

海外の高級バスタブ、洗面台もチェック?

ところで、ビルの1階と地下には、バスタブなどが並んでいて、さすがTOTOさん、と思ったのですが、こちらは海外の高級ブランドを扱うCERA TRADINGのショールームとのこと。そういわれれば、どこか高級ホテルっぽい感じがします。

でも、せっかくなのでこちらの見学(もちろん、購入目当てでもかまいません)もしてみてはいかがでしょうか。欧米式のバスタブ、つまりまさにバスタブそのものだけ、とか、見たこともない高級かつユニークなシャワーの数々、そして地下には、洒落た洗面台がずらり。

重厚感の漂うブランド品は、眺めているだけでも幸せな気分に浸れる、かも。


1階には、とってもおしゃれな「バスルーム」が展示されている	高級感あふれる洗面台やシャワーなども、なかなか見応えがある