巨大なドーム型の建物の中に、本当にかつて大空を飛んでいたさまざまな飛行機やヘリコプターがびっしりと並ぶ、だけではなく、天井からぶら下がっている機体もあって、その眺めは壮観というか圧倒されます。ここ「所沢航空発祥記念館」は、飛行機ファンなら誰でも知っているでしょう。でも、この記念館の楽しみはファンだけのものではありません。操縦席に乗ってみたいと思いませんか? 操縦をしたいと思いませんか??

記念館の外観。前に広がる芝生は憩いの場となっている

操縦席に搭乗できる機体も

記念館の入口を入ると、まずは吊り下げられたレトロな飛行機が出迎えてくれます。これは「会式一号機」と呼ばれる日本初の国産軍用機のレプリカ。イメージとしては、ライト兄弟が乗っていたような機体? これが飛び立つところは、ぜひ見てみたいものです。

で、ロビーの右手に進むと、いろいろな機体がずらり。どれも自衛隊などで活躍していた航空機ばかりです。目の前にデンと置かれた黄色い機体「ノースアメリカンT-6G」は、自衛隊でパイロット養成などに使用されたもので、操縦席を上から見ることが可能。「狭っ!!」というのが正直な印象。こういう飛行機なので当たり前なのだと思いますが……。

ロビーに展示されている「会式一号機」。会式とは、臨時軍用気球研究会の会からきている

さまざまな機体が展示されている「滑走路・駐機場」スペース

鮮やかな色が印象的なノースアメリカンT-6G。横に設置された階段を上がると操縦席を見ることができる。中はかなり窮屈そうだ

その隣のヘリコプター「バートルV-44」は、ローター(回転翼)が前後にあるタンデムローターというタイプで、機体の長さは約6mとのこと。こちらは機内に入ることができます。一般的なヘリコプターの「シコルスキーH-19」もあってこちらも搭乗OK。飛行機と違って、ヘリコプターはなかなか乗る機会がないので、これはなんともありがたいものです。

搭乗できる機体はもうひとつあります。1945年から1979年まで、およそ4500機が生産された「セスナT310Q」がそれ。実際に活躍してきた歴史を感じさせる操縦席にも、なかなか座れるものではありません。

そのほかにも、上を見上げると航空機、ヘリコプター、グライダーなどがかつての姿のまま展示されています。2階から、また階段からの眺めも、また違って楽しめます。機体によっては、内部のエンジンも展示されているので、そちらに関心がある人にはかなり興味深いことでしょう。

バートルV-44。日本が購入した昭和30年代当時は、世界最大級の容積を誇っていたという

階段の上からは、飛行機が空中を飛んでいるかのような光景が眺められる

飛行機、そして所沢と飛行場の歴史にも注目

「所沢航空発祥記念館」という名称のとおり、所沢は日本の航空史が始まった場所です。所沢に飛行場が開設されたのは、1911(明治44)年4月のこと。4月1日、幅50m、長さ400mの滑走路と飛行機庫、観測所などを備えた日本初の飛行場が誕生し、4月5日早朝に、高度10m、飛行距離800mで1分20秒飛行したという記録があります。

西武新宿線、所沢駅の隣の航空公園駅の前に広がる「所沢航空記念公園」は、その飛行場の跡地に造られ、記念館もその一角に建っています。公園は1978(昭和53)年、記念館は1993(平成5)年にオープンしました。広大な公園には広場や野球場があり、緑鮮やかな芝生も広がっていて、季節の花々や草木にも彩られます。

しかし、第2次世界大戦後、飛行場はアメリカ軍によって長いこと接収されていました。その返還を実現させたのは、所沢市民。平成20年度現在、約70%が返還されたとのことです。日本航空史の輝かしい歴史と、現在まで続く戦後の現実については、2階に展示されているので、こちらもぜひしっかりと注目したいものです。

1階には、飛行の原理、飛行機の飛び方などについての展示もあり、楽しみながら学ぶことができます。人類の飛行の歴史をはじめとした航空関連の資料も充実しているので、時間をかけて見学しましょう。新しい発見がいろいろとあるはずです。

2階の所沢メモリアルギャラリーには、所沢飛行場の歴史が展示されている

小型の風洞実験装置を使い、風を受けた飛行機の飛び方を理解することができる

重要航空遺産第1号の「九一式戦闘機」。戦前の状態を保っている貴重な資料だ

やはり大人気!! フライトシミュレータ

とは言っても、記念館の目玉はいくつかあるフライトシミュレータ。子ども、のみならず、大人にも大人気で、休日ともなると行列ができるほど。なかでも、ジャンボジェット機のシミュレータは本物にかなり近いもの。しかも、操縦そのものもかなりリアル。

スタートするとアナウンスはあるものの、操作すべきボタンなどがどこにあるのかちょっと迷います。「初級」を選び、エンジンボタンを押すと、計器が本物同様に作動。エンジン音も実際に近く、結構、緊張感が……。前の画面に映し出される滑走路を走り始め、操縦かんをぐーっと引くと、機体がゆっくりと浮かびます。「うわーっ」って思っているヒマもなく、車輪をしまうよう指示。「そこまで、忠実か」と思わず突っ込みを入れてしまいました。

しばしのフライトを楽しんだ後は、着陸。なのですが、これが結構厳しいらしい。どうにか、無事に着陸できると案内してくれた係りの方が驚いていました。初めての人はよく失敗するそうです。決して「子どもだまし」ではない、リアルなシミュレータ。ぜひトライを。

計器などリアルなジャンボジェット機フライトシミュレータ

このほかにも実際に使われていた管制卓が展示されていたり、大型映像館があったり、記念館は見どころがいっぱいなので、ゆっくりと時間をかけたいもの。そうそう、それからショップも忘れずに。飛行機関連の懐かしいもの、おもしろいものがそろっていて、あなどれません。また、レストランはこのような施設では珍しいランチバイキングも用意されているので、こちらも味わってみてはいかがでしょうか(詳細はサイトで確認を)。

実際に使われていた管制卓の展示。空港の仕事などが映像で紹介されている

ショップには昔ながらの飛行機のおもちゃなどをはじめとして、興味深い品がたくさんそろっている

航空会社のマークがプリントされたキーホルダー。ここならではのアイテムだ