為替ディーラーさんの話って訊いたことありますか? 訊きたいけど、なかなかチャンスないって? だから、やってみました座談会。今回から3回に渡って彼らのリアルな為替話をアップします。サブプライムの影響で為替市場にも大きな嵐が吹き荒れた2008年を邂逅し、実際何が起こっていたのか、そして、2009年は一体何が起こって行くのか、それぞれに忌憚なく語っていただいたので、100年に一度の未曾有の危機を為替でうまく乗り切るためのご参考にしていただきたい。(取材日時 : 2009年1月29日夜銀座にて)

出席者
あや(今年の相場のキーワード : 原点回帰)
とも(今年の相場のキーワード : 円は買えない)
ゆう(今年の相場のキーワード : 目に見えないアンワインディングのフローに注意)

震源地以外のところが深刻

とも「今の世界的な状況を一言で表すと、ピンハネしていた産業が立ち行かなくなったってしまったということ。」

あや「バブルだったんだ。皆これはおかしい、バブルだと思いつつも、別に自分が最初に降りる必要はないしなんて思っていたら、行くところまで行っちゃいました。で、弾けたときは大変強烈に来ました、っていうことだね。」

ゆう「07年、08年とサブプライムの話が出た時、皆おかしいと思っていても、実際的に自分の身に降りかかって来てなかったからな~。本当に情勢が悪くなってきて自分の会社でもリストラがあったりして、ああ、そういう大変なことになっていたんだと分かった。」

あや「だから、後になればなるほど影響は大きくなって実は震源地の米国よりもそれ以上に欧州とか新興国の方が深刻なんだよね。米国はそれでも自分とこは楽しい思いをしたというのもあるから、差し引き考えれば実はそんなでもないかと思ってるんじゃないの。

問題は米国の後から乗っかったところだよね。どんどんレバレッジが掛かっている分やられが大きかった。最初は欧州にしても、日本にしても、新興市場にしても、米国大変だね~、あんなになっちゃったら駄目よ、なんて他人事だと思っていたけど、実はレバレッジ掛けて投資していたのは、欧州であり、世界中の人だった。

米国は当然傷んでいるけど、もっと痛んでいるのは米国以外のとこなんだよね。だからこそ、去年の7月半ば以降ドルは独歩高になっている。レパトリ(レパトリエーション : 海外に投資していた資金を自国に戻す行為)がどうのとかキャッシュがどうのとかじゃなくて、結局英国見ても分かるけど、一番深刻なのは米国じゃないって皆段々と分かってきた、蓋を開ければ開けるほどね。」

とも「僕はむしろ英国自体がやばいと思う。米国の全産業における利益の40%は金融から出ているという『エコノミスト』の記事をベースにして考えて、それがひょっとしたら今後10%とか0%になっちゃう可能性も有るかもしれないけど、残りの産業が曲がりなりにも60%が自動車だとするよね。それを、英国に当てはめると英国って今自国産業がないんだよね。ジャガーとか自動車産業だってウィンブルドン化(市場の主要な金融機関が外資系で占められること)しているし、油田と金融しかないという観点からもポンドドルおよびユーロポンドがパリティ(等価価値)になる可能性だって否定できない。」

円安がやって来る?

あや「為替は相対評価だからドルは弱いかもしれないけれど、もっと弱い国がいるからドルが上がるというのがここ半年間のマーケット。そうしている間に、混乱が落ち着いて、米国はちゃっかり色んなことやって、最終的に立ち上がって来ると思っているので、混乱が落ち着いてくると、最後には、えっ、なんで円なんて買ってたんだっけ?なんてことになるんじゃないかな。

この半年間の欧州の体たらくを見ていると、もう欧州も大分売った、色々なこともやった、そろそろええやろって感じもするけど、一方でユーロなんて寄せ集め通貨だから直ぐには良くはならないかもしれない。でも、皆なんで円買ってんだっけ、という時が必ず来る。以外と皆思ってないけど、その時強烈に円安になることはあるんじゃないのって、本気で思うけどね。

米国については、景気がトップを打って下がらなきゃならないところに、住宅バブルがもう一花来ちゃった。2007年1月に住宅価格が下落した時があったけれど戻ってしまったので、やっぱ大丈夫だと思ってしまい、もう一回戻ってしまった分延命してしまった。元々米国の景気がトップを打っていて、本来は下がるべきだったのに、無理やり見かけじょう上がってしまった分、そのちょうど景気後退した局面にサブプライムがオーバーラップしてスパイラル的にどんどん落ちて行ったんだ。

時間軸としては後退局面になっていて、それがサブプライムということで一気に短期間に起こってしまった中で、実は価格調整はあっと言う間に起こってしまったので、時間さえ経てば、後はもう幾らでも上がるだけと行くところに実はなっているかもしれないという感じではある。」

とも「今のどこかで円安の流れが来るという意見は個人的にはフレッシュだな。だってそんなこと言ってる人っていないから。僕はもうちょっと下がると思っているんだけど、ただ、チャートを見た時に昔の80円割った時と合わせると、長期に見たらすごくきれいなダブルボトムになってきた。だからチャート的には140円台までは上がっちゃうことは有るかもしれない。ただ、ファンダメンタルズ的にはどうか分かんないけど。」

中編に続く-。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。