前々回、前回は首都圏を代表する通勤路線「山手線」「京浜東北線」のダイヤを眺めた。今回は近畿を代表する「大阪環状線」を眺めよう。山手線と同じ環状路線だけど、列車の運行形態はまったく違う。

山手線は各駅停車のみ。すべての列車が車庫に入るまで周回を続ける。だからダイヤを描くと線は真っ黒。ラッシュ時間帯は塗りつぶされたようになった。大阪環状線は関空・和歌山方面の特急列車が間借りし、関西本線(大和路線)方面と阪和線方面の快速列車が乗り入れている。特急列車を赤、快速列車を青、各駅停車を黒で描くと、ダイヤは3色で彩られる。まずは始発から終電まで、全区間の全体図を見てみよう。

大阪環状線の平日ダイヤ(2014年12月)

山手線のダイヤと比べると、同じ環状線でもこんなに違うのかと思う。快速列車が多いので、京浜東北線と似た雰囲気だ。ただし、上部に特急列車の赤い線が多く、圧縮されて暖簾(のれん)のようになっている。山手線は1色で澄ましているけれど、大阪環状線は3色。コテコテやな!

今回も列車ダイヤ描画ソフト「Oudia」を使った。データは乗換え案内サイト「えきから時刻表」の大阪環状線を参照した。したがって、駅の並び順が天王寺駅から天王寺駅までとなっている。中心となる駅は大阪だけど、大阪環状線は天王寺駅発着の列車が多いので、このほうが都合がいい。ダイヤを詳しく見る前に、大阪環状線の運行系統を知っておこう。

大阪環状線の運行系統(2014年12月)

黒い線は各駅停車。山手線のように周回運転する系統のほかに、天王寺駅発着の区間運転があり、一部は桜島線(JRゆめ咲線)に乗り入れる。青い線は快速列車で、天王寺駅を発着し、奈良方面の関西本線と、関空・和歌山方面の阪和線に乗り入れる。どちらも天王寺駅発着で、大阪環状線を1周してから各方面に向かう。まるで彗星の巣から飛び出すようだ。各方面から到着する快速列車も同様で、天王寺駅に着いた後、ぐるりと1周して天王寺駅に戻ってくる。同じ駅を2度発着する珍しい列車だといえる。

赤い線は特急列車だ。関空方面の「はるか」と紀州方面の「くろしお」である。京都駅や新大阪駅で新幹線と連絡するため、大阪駅を経由しない。東海道本線から梅田貨物線を経由し、福島駅付近で大阪環状線に乗り入れる。特急列車は福島駅には停車しないので、通過時刻がわからず、ダイヤには反映できなかった。西九条駅には一部の特急列車が停車するので、その所要時間から推定して、天王寺駅と西九条駅との間の特急列車を入力している。

7時台から12時台を拡大

大阪環状線の知識を得たところでダイヤを眺めよう。全体を俯瞰すると、3層に分かれているように見える。上段は特急列車が走る天王寺~西九条間だ。実際には、赤い線は福島駅付近まである。中段は西九条~京橋間。この区間の密度が下段より濃い、つまり列車が多い理由は、各地からの快速列車のうち、京橋駅発着の列車があるからだ。

下段は京橋~天王寺間。大阪環状線の中では閑散区間で、快速列車も各駅に停車する。そしてこの区間を見ると、大阪環状線の朝ラッシュ時と日中時の違いがよくわかる。朝ラッシュ時は各駅停車が主で、快速列車の乗入れは減る。日中は逆に快速列車が増えて、各駅停車は快速列車を補完する役割のようだ。

快速列車は221系・223系などのクロスシート車が使われる。各駅停車は103系・201系が主だ。JR西日本は2016年から、大阪環状線に新型車両323系を導入すると発表した。323系の増備に応じて、置換え対象の103系・201系が消えていく。大阪環状線では今後、各駅停車に注目だ。乗ったり撮ったりする場合は、日中よりラッシュ時間帯のほうが遭遇率が高いといえる。