第1回のカウンセリング体験に続き、日本マンパワーのキャリアカウンセラー水野みちさんに、最近のキャリアアップ事情、そして、今注目のCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格について伺ってみた。

キャリアアップを目指すには、まず何から始めればいいのでしょうか?

日本マンパワーキャリアカウンセラー・水野みちさん

キャリアアップのために、自分の目指したい将来像やビジョンを待つことも大切ですが、あえて触れておきたいのは、世の中の人材需要について意識しておくことの重要性です。具体的には、自分の勤めている会社はもちろんのこと、活躍したい分野でどんな人が求められているのか、成果を上げているのかということを意識するということです。例えば、今の会社は外資企業との合併話が進んでいるということであれば、グローバルな社員が求められるだろうとか、急激な変化が進む中、自ら工夫改善が出来る柔軟性や企画力が重視されるだろうなど。

このようなトレンドを知るためには、ネットなどの情報に頼るだけでなく、社内・外に関らずイキイキと活躍している社員と積極的に話をすることをお勧めします。食事にお誘いするのも一つです。きっと文字媒体以上に響いてくるものがあるはずです。その人の働き方や考え方、能力、今後身につけたいと思っているスキルなどを聞いて、自分にはないものがあったら美味しいところ取りの感覚で見習うところから始めてみてください。新しい視点を得ると、将来展望も開けますし、話しながら自分が目指したい方向性が見えてくることもあります。

世の中へのアンテナを高くしておくためにも、社外の知り合いや転職した元同僚などとつながっておくことや、仕事に関連する勉強会に行って同業他社の人と話すこと、異業種交流会に参加することなども良いでしょう。キャリアアップを目指すには、視野を広げること。その上で自分は社外でどれだけ通用するのか?何が足りないのか?などを客観的に検討することをお勧めします。

キャリアアップを目指して転職する場合、成功する秘訣はありますか?

まず、同業種に転職する場合、一番大切にしてほしいことは、「面接で前の会社を否定しないこと」です。むしろ、「前の会社にはこんな問題があったが、自分はこれだけ工夫し、実績を残しました。そのうえで御社の取り組んでいる事業や商品に魅力を感じたんです」ということを採用側に伝えていかないと、なかなか転職は難しいと思います。恋人関係と一緒です。前の彼女の悪口を言っている人に好印象は抱かないですよね?自分に対しても同じように不満を持つ日が来るのではないかと想像してしまいますし、実際にその可能性は高いです。

異業種に転職する場合は、可能であれば、実際にその仕事をしている人、もしくは近い職種の人に会ってお話を聞くことですね。現場で働く生の声を聞いて、自分のイメージしていた仕事とギャップがないか見極めることで、転職後のミスマッチを防ぐことができます。なので、転職をする場合は人脈を持っていることも大切です。

企業側は、中途採用者にどんなことを求めているのでしょうか?

よく言われるのが、コミュニケーション能力ですね。今後は、会社にうまくなじみながらも積極的に新しい提案をしてくれる、そんなバランス感覚のある人が求められていくと思います。

資格取得は、キャリアアップにどのように役立つのでしょうか?

資格取得を目指す方の目的は大体2パターンに分かれます。一つは「能力の証明」として取る場合。これは「自分が今まで培ったスキルを、資格という目に見える形でアピールしたい」と考えているタイプの方です。二つ目は「知識の習得」のために取る場合です。たとえば、「今は営業職で、会社の経営に関する知識があまり得られないから、中小企業診断士を取得しよう」といった、勉強目的で取得するタイプの方ですね。要は、ゴール地点を見定めて、資格を自分の武器としてどのように活用したいのかをしっかりと考えることが大切なのです。

CDA資格について伺いたいと思います。なぜ、今CDA資格が注目されているのでしょうか?

キャリアって「生き方」に通じますよね。人が自分らしく生きるための考え方を学ぶのがCDA。今は、そうしたことに興味を持つ方が増えているのだと思います。また、企業の人事部や学校のキャリアセンターに勤務している方が、「能力の証明」としてCDAを取ることが増えています。

CAD資格は、実際にどのような場で活用できるのでしょうか?

人材紹介・人材派遣・再就職支援業界でコンサルタントとして活躍している方もいますし、学校などの教育機関で「キャリアカウンセラー」として勤めている方もいます。また、行政機関でもキャリアカウンセラーの増員がさけばれていますので、今後、社会で必要とされる資格の一つだと思います。

水野さんが、キャリアカウンセラーになったきっかけはなんですか?

私は、幼いころに海外を転々としていた経験があります。アメリカやオーストラリアを行き来する中、日本人は社会の価値観にとらわれて、自分らしい人生が歩めなくて悩んでいる人が多いと感じました。

実際に、「高学歴、高収入なら人生成功だ」と信じてエリート街道を生きてきた40代くらいの方が「自分の人生本当にこれで良かったのかな」と思い悩んでしまうことも増えてきているようです。社会の硬直した価値観を疑問なしに取り込むということは、自分という大切な個人を意識せずに生きることになってしまいます。

一方で「この考え方はお母さんの価値観に影響を受けた、これは学校の先生の考え方の影響、そして、これが今の私がしっくりと来る価値観」と、自分はどこに軸を起きたいのかを意識して考えることができれば、どんな生き方が自分の喜びにつながるか気付けるようになるのではないでしょうか。これは、決して我侭に振舞うことではありません。そうやって、人がより気持ちよく生きるための方法を、理論として示して、その人に元気や自信を与えるのが「キャリアカウンセラー」の役割。人生の転機が訪れたときのための意思決定の理論を知っていれば、もっと上手に悩めるんだよということを多くの人に伝えていきたいと思います。

CDA資格の魅力はどんなところにありますか?

仕事でなくとも活用できるのがCDAの面白いところです。自分のためや、身近な人をサポートするためにも役立つ資格なんです。例えば、ある50代の男性は、CDAと取ったことで、奥さんとの関係が良くなったと言います。「今日、買い物に行ってこんなことがあったのよ」という奥さんの話を、以前は「うんうん」と聞き流していたのを、「それは楽しかったね」と一言い返すようになったそうです。その一言だけで、奥さん表情がガラッと変わり、日常のコミュニケーションが楽しくなったそうなんですね。なので、CDAは、聞くスキルや基本的なコミュニケーション力もアップさせることができる、魅力的で面白い資格だと思います。

「個性を活かして働きたい!」難しいことではあるが、叶えていきたい望みでもある。CDA資格は、専門知識の取得のみならずコミュニケーション能力の向上にも役立つ資格だ。理想のワークスタイルを実現させる武器として、CDA資格の取得を考えるのも良いのではないだろうか。