今回は、食事中の方は読まないで。トイレにまつわるエピソードだから! 知っている人も多いと思うけど、飛行機のトイレの中には緊急用のコールボタンがあって、何かあったらCAを呼べるようになっているの。普段ほとんど鳴ることはないのだけど、ある日のフライト中、後方にあるトイレの一室からコールボタンが鳴ったので、すぐにそのトイレに駆け付けたわよ。

ドアをノックしながら「お客様どうかされました」って問いかけたわ。そしたら中から男性の声で、「ヘルプ! ヘルプ、ミー!! 」と救いを求める声が。機内のトイレは緊急時用に外から開けられるシステムになっているので、何か大変なことがおきていると思ってすぐに非常手段を使ってトイレのドアを開けたのよ。

すると、なんと、お客さまの片足がトイレに突っ込んでるじゃない!

一体どうしたら足がトイレにつっこむの?? よくよく事情を聞くと、便座に立って用を足そうとしたら、急に飛行機が揺れてバランスをくずし、片足がトイレにズボッと入ってしまったとのこと。トイレは循環式で、便器の底の部分がパコンと下に向かって開き、流れていくタイプ。つまり、突っ込んでしまった足を引っ張ると、この底の部分が引っかかってしまって、なかなか抜けないわけ。

お客様は、自力ではとうてい無理とコールボタンを押してCAに助けを求めたというわけ。「まずは助けねば! 」と、お客様の背中と腕をつかんで彼の救出を試みるも失敗。さすがに私1人では無理と判断、すぐに他のCAの応援を頼み、総勢3人で彼の背中や腕など上体をつかんで「せーのっ」で脱出作戦を決行。

最初はうまくいかず、何回かトライした結果、ようやく救出成功。全員「やったー!! 」って思ったわ。でも! でも!! なんか、臭い~!!!

そう、出てきた彼のふくらはぎから下は汚物まみれ。苦肉の策で、トイレから彼の座席まで通路に新聞紙を広げてそこを歩いてもらったわ。お客様は無事だったけど、とにかく機内には悪臭が漂い、気分が悪くなるほど。周りのお客さまも眉間にしわを寄せて、「なんだ、なんだ」といった様子。今でも思い出しただけで、鼻をつまみたくなるような出来事だったわ。

イラスト: 伊東ぢゅん子

著者プロフィール

pこ
  今から、ん年前、外資系某エアラインに客室乗務員として入社し、5年間国際線勤務。月のうち2/3はフライトのために海外へ。ロングステイのフライトでは、観光やグルメ、ショッピングにいそしむ日々。ファーストフライトとラストフライトで、コックピットのジャンプシート(補助席)からみた着陸の光景は忘れられませぬ。