ロサンゼルス国際空港。乗り継ぎするとCAの顔ぶれも一新

欧米への長距離便に乗っていると、年配のCAが多いと感じたことはないだろうか。

あるアメリカ系航空会社に乗ったときのことである。機内食のカートをえっちらおっちら押してくるCAがいるではないか。おばあちゃんと言った方がピッタリくるほどの年齢のCAである。「飲み物は何がいいか」と優しい英語で話しかけてくる。ジンジャーエールを注文したのだが、気流の悪いところを飛んでいるらしく、そのCAがグラスを持ったまま倒れないようにこらえているので、思わず自分で飲み物を取ってあげた。「どうかこのCAが無事に乗務を終えますように」と祈りたくなる状況だった。

そこまで年配のCAが乗っている便は珍しいが、概して、アメリカの航空会社では年配のCAかスチュワードばかり乗っていて華やかさには欠ける。ところがアメリカに着いて国内線に乗ると、乗務員の顔ぶれ、いや年齢層がまったく違う。国際線に比べると数十年は若返った感じである。

アメリカン航空。今週は連邦破産法適用申請のニュースで注目された

日本人は人気者?

同じ航空会社なのに国内線と国際線ではどうして乗務しているCAの年齢層が違うのだろう。

それは、日本路線がCAの争奪戦になるほど人気があるからだ。日本人の乗客はとにかくおとなしい。文句を言うにしても、その民族性からなのか、帰国してから国内の事務所に言う。CAが機内で直接クレームを言われることも少ない。それに行儀もよいし、無理な注文もしないし、英語が苦手だから長話もしない。うるさい乗客の例をあげると民族差別になりそうなので、その点は読者に想像していただくとして、とにかくCAにとって日本人の乗客は手のかからない存在なのだ。

この人気の日本路線を巡る争奪戦に勝利するのは当然、キャリアの長い乗務員だ。

年功序列という考えが、乗務員の現場ではまだまだ生きている。だから、キャリアの長い、つまり年配のCAが自然と日本路線に集まるというわけである。アメリカの場合は労働組合の力が強く、なかなかCAを辞めさせられないという事情もある。ただ、最近はチャプター11(米連邦倒産法第11章)に入って組合を解散させて乗務員を一新する航空会社もあり、日本路線もずいぶんCAが若返った印象がある。

CAの訓練。イスタンブールのトルコ航空トレーニングセンター

とはいえ、年配のCAが多いのは実はメリットの方が大きい。ベテランになるほど上質なサービスが期待できるからで、そういう意味では日本路線は恵まれているともいえる。

ちなみにアジア路線に若い乗務員が多いのは、アジアでは昔の日本のようにCAが花形職業であり、中には3年程度で退職する花嫁修業的な仕事になっている国もあるからである。