「3年は働くべき」という通説がありますが、本当に正しいのでしょうか。筆者はそういった旨のことを話す転職経験者は見たことがありません。それを口にしているのは10年も20年も働いている、転職とは無縁だった人が多いのではないでしょうか。

実際に3年前後で転職した若者の現実が知りたい。

そこで今回インタビューしたのは26歳の男性。新卒で大手旅行会社に入社した彼は、1年足らずで退社します。その後、『再新卒』という方法で、もう一度新卒として就職活動をして大学職員になり、現在2年目です。

「転職に至った理由」と「いま」を聞きます。

大学職員という仕事

--キャラクターに合った職場という話で、いまはどのような仕事をされているのですか?

私立大学職員で、主に学生生活に関わる部署にいます。

学生の課外活動全般や奨学金・留学生関係の仕事に携わります。

--大学職員は人気の職種ですが、どういう人が向いていると思いますか

基本的にデスクワークなので席について黙々と作業に集中することができる人、一方で学生対応やトラブル対応もするのでコミュニケーション力もある人がいいと思います。

私自身は学生対応の課に配属されたこともあり、大学職員のイメージそのものの仕事ができています。ただ、転職の経験も活かしたいので、いつかキャリア系の部署にも異動してみたいです。

--ぶっちゃけ、他の人にオススメしますか?

少子化で斜陽産業であるという点を考えた上で、なお興味があるのであれば薦めます。

きちんとプライベートの時間を確保できて、ワークライフバランスを重視する人にはとてもいい職場だと思います。もちろん、やっている仕事も公共性が高く、やりがいがありますよ。

転職経験者として新卒にアドバイス

--転職経験者として、逆に新卒にアドバイスをするとしたら何かありますか

批判的な視点をもって「就活」に挑んだ方がいいです。

周りに合わせるのではなく、自分なりの解釈でもって就職活動に取り組むほうが結果がでます。その結果、もしかしたらアナタにとって「就活」が正解ではないこともあるでしょうが、それもアリです。

結局は「当面の生き方について最善の一手を考える」ことが重要であり、さらに「仕事にやりがいが持てるかどうかは、生きる上では必ずしも重要ではない」とも転職を経て思い至りました。

--『やりがい』という言葉がありましたが、最終的にはもともとやりたかった仕事から離れたわけですが、そのあたりはいかがですか

『仕事はライスワークで、プライベートはライフワーク』というような考え方がありますが、転職を経てそれに同感するようになりました。私自身も仕事にやりがいを求めることはやめていて、生活するためのライスワークだと割り切っています。

もちろん仕事にやりがいがあればいいですが、全員に必要な条件ではないのではないでしょうか。その代わり、プライベートでやりがいの感じられることをやって、生活を充実させていければいいと思います。さらに言えば、その趣味が実益(お金人のつながりなど)につながるのが一番よいのではないでしょうか。

--ライスワークとライフワークを、うまく自分の意思でコントロールできるのが最高ですね。いわゆる日本人の働き方は、そこを混同しているというか、強制的にライスワークをライフワークにさせられているような気がしてしまいます……

日本人は働きすぎだと思いますし、「長く働かなければならない」という同調圧力がお互いの首を絞めていると感じます。

全員がバリキャリである必要はないという立場なので、ゆるキャリの人でも誰かに責められることなく生きていける社会になるといいなあと思います。

--ゆるキャリは悪という風潮の存在が、なんとなく感じられますね……。最後の質問ですが、『3年で辞める若者』の一人になって、短期間での離職という選択をする若者についてはどう思いますか

全然問題無いと思います。むしろ私みたいな状況にあって、「再新卒」に挑戦したい人は1年未満で辞めるべきです。

ムダな我慢強さで心身を疲弊するよりも、自分に合った環境でパフォーマンスを適切に発揮できる方が良いと信じています。

ただ、意識は高くなくていいのですが、離職した後の当面のビジョンがないと転職はうまくいかないかもしれません。転職の一瞬でもいいので、頭と身体は動かしてほしいです。

--最後にこれを読んでいる方に何か伝えたいことがあれば

私の周りには同世代で転職している人たちがいっぱいいます。その人たちを見ていると、皆、自分の生き方について積極的に考える事を経て、転職を成功させています。

就活も転職も、「仕事」や「会社でのやりがい」などの狭い視野ではなく、「自分の生き方」について考えながらやるのが良いのだと思います。

--ありがとうございました

後記

恐らくこれを読んでいるマッチョな思考の人は「前職がつらかったから離れた」と受け取るかもしれません。しかし、彼の場合は『再新卒』というツールを自ら編み出し、それを武器に次のステージに進んだという事実があります。耐えることも美徳かもしれませんが、自分の生き方を臨機応変に模索するのもまた美徳ではないでしょうか。

彼のいうようにビジョンがあれば、それは「逃げ」ではないのです。

※画像は本文とは関係ありません

(次回は10月24日掲載の予定です)


武野光
平成2年生まれ。「TOEIC未受験」「サークル未所属」「友達の数が片手未満」といった状況から就職活動に挑み、その体験から得た教訓をつづったブログ『無能の就活。』が大きな反響に。現在はサラリーマンと兼業で作家活動を行う。著書に『凡人内定戦略』『凡人面接戦略』(中経出版)、『就活あるある ~内定する人しない人~』(主婦と生活社)など。マイナビ2016でも、マンガ『キミ! さいよー』(石原まこちん/小学館)内で、一言コラム平成ベビーの就活用語辞典掲載