※2010/04/28掲載記事の再掲です。

取引先へ資料や請求書を送るときに同封する「送付状」。その役割や作成・送付するときのマナーを知らない人も、最近のビジネスパーソンには多いようだ。必要なときに慌てたり、知らずに恥をかいたりすることがないよう、「送付状についての基本」を正しく知っておこう。

送付状は「相手への気配り」を示すプラスα

大学講師・作家、就職コンサルタントとして多くの講座や著書を持つ唐沢明氏によると、送付状とは、「必要不可欠なものではないものの、あればプラスになることはあってもマイナスになることはない、付加価値的なもの」とのこと。

「たとえば作家が自分の本を知人に送るとき、本だけ1冊入れても失礼にはなりません。ただ、『このたび私の本ができましたので、1冊送らせていただきます。どうぞお目通しください』と一筆書いた送付状とともに送れば、相手には本だけでなく、その作家の気持ちも一緒に届きます。このように、送付状とは相手に、送る側の『本気』や、『相手を大切に思う気持ち』を伝えるものなのです。ただ送るのが○なら、送付状を付けると◎になる、というように、プラスαとして付けるものと考えるといいでしょう」(唐沢氏)。

近年、ビジネスも合理化が進み、簡略化を好む傾向が強まっているため、若い世代ほど送付状を付けないケースが増えているという。一方、年配の方や役職についている人などにはまだ、付けて当たり前という意識も根付いているとのこと。届いた先でどんな立場の人が受け取り、開封するか分からない場合は特に、送付状が重要な役割を果たすこともありそうだ。

「送付状を付けるか付けないかは、相手との関係性をどう考えているか、ということにもつながるかもしれません。単にビジネスライクに付き合うのか、人と人との付き合いとして末永く信頼関係を築いていきたいのか。それだけ時間と労力をかけるということですから」と唐沢氏。

送付状の基本は「シンプル イズ ベスト」

付加価値的なものであっても、送るなら正しくきちんと書くことが必要だ。字が乱雑だったり、言葉や名前等の間違いがあったりしては、かえってマイナスの印象を与えてしまうことになりかねない。

唐沢氏によれば「書き方には特に決まりはない」とのこと。入れるべき事項としては、あいさつ文と送付するものの内容、日付など。差出人情報は、封筒などにきちんと記載されているなら必ずしも入れなくてもいいそうだ。「ビジネスモードのものなので、『個性』や『かわいらしさ』などは不要。シンプルイズベストと考えて、正しく丁寧な字で書くことが大切です。さらに、『拝啓・敬具』や時候のあいさつを入れ、行が少なくて余白が多くなり過ぎたり、反対に行が多すぎてはみ出したりすることなく、1枚の用紙にきれいに収まっていると、見た目も美しくてさらにベター」と唐沢氏。

送付状1枚で、相手に「この人は仕事がデキる人」と印象づけることもできるという。それはつまり、逆のことも起こり得るということだ。「たかが送付状」と侮ることなく、細部にまでこだわって丁寧に書くその姿勢は、ビジネスパーソンとしての資質にもつながるものと言えるだろう。

文●大野夏季(エフスタイル)