デロイトトーマツコンサルティングはこのほど、HR(人事組織)に関する継続的な調査「Global Human Capital Trends 2016」 の結果を発表した。同調査は2015年10月1日~12月10日、130カ国の管理職・人事部門責任者の7,096名を対象に、アンケートとインタビューによって実施された。

4回目となる今年の「Global Human Capital Trends」は「新たな組織 - デザインの転換」がテーマだった。

働き方は、どのように変化している?

現在、世界の企業において、HR(人事組織)では労働に関する既成概念の破壊が起きているという。同社執行役員 パートナーの土田 昭夫氏は「世界では、現在デジタルネイティブである20~30代のミレニアル世代 (1980年~2000年生まれ)が労働力の過半を占めるほど参入しています。その一方で、ベビーブーマー世代(1946年~1964年生まれ)は70~80歳代まで働く、という人口構成の二極化が起きている。また、デジタル化が進むことによって、職場と働き方においてもテクノロジーがビジネス・モデルを断絶し、抜本的に変化を与えています。さらに、企業はビジネスの環境変化に対応するために、これまで以上にアジャイル(俊敏)に失敗・成功を包み重ねていく必要があります。こうした環境の変化によって、会社と社員に新たな関係性ができていると考えます」と指摘した。

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの土田 昭夫氏(右)

このような労働の変化によって、HR(人事組織)に2つの課題があるという。 「1点目は、組織のデジタル化です。ビジネスリーダーと従業員が、デジタル時代に適応したマネジメントのやり方や組織の作り方、変化の起こし方を理解する『デジタルマインドセット』にシフトできるように、HR(人事組織)がどのようにサポートしていくかが問われています。

2点目は、HR(人事組織)のデジタル化です。新たなデジタル・プラットフォームやアプリを採用し、HRのプロセスやシステム、組織自体を変革することによって、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値)の全体に革新をもたらすことです」と土田氏。

HR(人事組織)の再編成・再設計に重要なトレンドは?

こうした変化を受けて、同調査ではHR(人事組織)の再編成・再設計をするヒントとなる、重要な10のトレンドを発表した。

「今後、組織の再編成・再設計をするために重要となる10のトレンド」について、企業が「重要性が高い」と回答した割合をみたところ、最も割合が高かったのは92%で「組織デザイン」だった。次いで「リーダーシップの覚醒」(89%)、「組織文化」(86%)、「エンゲージメント」(85%)。以降、「ラーニング」(84%)、「デザイン思考」(79%)、「HR組織のスキル向上」(78%)という結果となっている。

「今後の組織の再編成・再設計をするにあたり重要となる10のトレンド」

これからの「組織」はどうあるべきなのか

同調査で「組織の再編成・再設計」におけるトレンドの1位となった「組織デザイン」。企業はどのような展開をしていくべきなのだろうか。

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 ディレクターのキャメル・ヤマモト氏

同社執行役員 ディレクターのキャメル・ヤマモト氏は「企業の組織デザインには、1つの会社文化に染めて組織に同調させていく『日本同調型』と、経営のトップがビジョンを提示しそれに合わせた組織や役割を新たにつくっていく『欧米統合型』があります。『欧米統合型』は、必要があれば会社の中に外部の人材を取り入れています。とはいえ、組織デザインを『日本同調型』から『欧米統合型』にシフトするのが良いという訳ではありません。

では、どのような組織デザインかといえば『新型ネットワーク』です。これは『日本同調型』や『欧米統合型』といった企業の体系があった上で、会社からプロジェクトのチームを外に切り出して、社外の人も巻き込んで様々なチームをつくる組織の在り方です。例えば、数カ月や数年で1つの映画をつくる場合は制作が終わるまで、というふうに1つのプロジェクトが終われば解散する。企業はそういった組織デザインにしていく必要があると思います」と指摘した。

「組織・人材」のつなぎ方の変換

さらに、今後の日本企業のHR(人事組織)の在り方ついて、ヤマモト氏は「今まで人事で仕事ができる、とされた人は、制度をつくることができる人でした。加えてこれから必要となるのは、仕事の現場に入りこみ質問をすることで、どのような面で事業が助けてほしいかを聞き出すことです。例えば、事業のトップの『こういう人を採用したいけどできていない』といった声や、現場の『こういう能力をスキルアップしたいけどできない』といった声など、組織の課題がみえるかもしれません。そのように現場の声を聞き出した上で、全体として会社の制度を考えると良いと思います」とアドバイスした。