マウスコンピューターは3月28日、クリエイター向けブランドである「DAIV」シリーズの発売に合わせて都内で製品説明会を開催した。ブランド立ち上げの経緯や製品の特徴などを紹介した。

VRコンテンツ制作にも使えるクリエイターが求める高性能PCブランド

マウスコンピューター 代表取締役社長 小松永門氏

説明会ではまず、マウスコンピューター 代表取締役社長 小松永門氏が登壇し、「DAIV」のブランドコンセプトについて語った。カタログなどに使われているイメージビジュアルは7色の水、もしくは炎が沸き立つ様子をイメージしたものであり、「感情や情熱といった、芸術性を爆発させるようなイメージを込めた」とのこと。

「DAIV」という名称は「DYNAMIC APPROACH IMAGERY OF VISUAL」の略で、「飛び込め、感性の世界へ。」というタイトルが掲げられており、作品の制作に没頭できるPCブランドとして、このような名称にしたそうだ。

「DAIV」のイメージビジュアル。クリエイターの"沸き立つようなパッション"を表現する

「DAIV」がターゲットとするのは、写真の作品制作や4K/8K映像の編集、VRコンテンツ作成など、新しいイメージを作り出していくアマチュアからプロフェッショナルのクリエイターである。

マウスコンピューターでは、2015年から写真編集に特化したデスクトップPC「MDV for Photo」シリーズを展開しているが、改めて「DAIV」というクリエイター向けPCブランドを立ち上げることにしたのか。そこにはコンテンツの変化とユーザーニーズがある。

小松氏は同社製デスクトップPCにおけるグラフィックスカード搭載率の推移を紹介。2011年の段階では、ミドルレンジ&ハイエンドクラスのグラフィックスカードを搭載したPCの割合は42%だった。それが2014年に63%、2015年に76%と大きく成長し、同社のビジネスにおける中心となっている。一方で、エントリークラスのグラフィックスカードや内蔵グラフィックス搭載製品の割合は減ってきている。

出荷PCのグラフィックス搭載比率。ここでの"ミドルレンジ&ハイエンド"とは「GeForce GTX」クラスを指す

この理由の1つとしては、マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」が好調ということもあるが、「描画負荷の高いゲームや新しいリッチコンテンツが増えたことにより、グラフィックス能力の高い製品を求めるニーズも増えてきた」と小松氏は説明する。

パワフルなPCに対するニーズの高まりに合わせて、「G-Tune」に加えて、クリエイター向けの「DAIV」を投入し、「制作にはDAIV、遊ぶにはG-Tune」という2本柱で市場を拡大させていく考えを示した。最近では、VR関連が盛り上がってきていることからも、そちらの方面にも積極的に展開していくという。

クリエイター向けやゲーミング、VRなど高い処理性能が求められるマーケットにフォーカスする

クリエイターの声を基に開発

「DAIV」の開発には、広告制作プロダクション・アマナが協力。同社に所属する200人以上のクリエイターにヒアリングして、生の声を基にしてデザインされた。カスタマイズ性の高さや、ポート類やカードリーダーの配置、社内やスタジオ内での持ち運びやすさなどが要望として挙げられ、後述する製品の特徴に取り入れられている。

ターゲット層。PCを使ってものづくりをするプロフェッショナルからライトクリエイターを対象とする

製品開発に対して寄せられた要望

DAIVは3製品でブランド展開

マウスコンピューター コンシューマ営業統括部 部長 氏家朋也氏

続いてマウスコンピューター コンシューマ営業統括部 部長 氏家朋也氏が「DAIV」シリーズの特徴や製品ラインナップなどの詳細を紹介した。「DAIV」は「デスクトップPC」「ノートPC」「コンセプトモデル」の3製品を展開する。

DAIVブランドのPCは大きく分けて3製品で展開する

デスクトップPCは、CPUや搭載グラフィックスが異なる複数モデルを用意。スタンダードモデルではCPUに第6世代Intel Coreプロセッサを、一方の上位モデルではHaswell-Eを採用。グラフィックスはそれぞれ、NVIDIA GeForce GTX、またはNVIDIA Quadroが搭載できる。

デスクトップPCのスペック

外装デザインについてもアマナに所属するクリエイターの意見を取り入れたものとなっており、上部に配置された各種インタフェース、メンテナンス性の高い脱着式の吸気パネル、持ち運びしやすい大型の取っ手を設けるなど、実用性の高い仕上がりとなっている。

新設計の筐体には多くのこだわりを詰め込んでいる

会場に展示されていた「RAW現像向け」モデル

アナログ時代を彷彿とさせる電源スイッチに各種インタフェース、大型の取っ手が印象的

フロントパネルは取り外し可能で、防塵用フィルターは水洗いが可能だという

オプションでキャスターも取り付け可能。これにより、PCを抱え上げなくても移動できる

続いてはノートPCだが、詳細な説明に入る前に仕様の訂正がアナウンスされた。当初は液晶ディスプレイのsRGB比を100%としていたが、実際の製品ではsRGB比95%になる。

氏家氏によると、採用した液晶パネル自体はsRGB比100%というものだったが、個体差が大きく。マウスコンピューターによる実測値では、「平均値で97%、下限値で95%」だったため、下限値に合わせて仕様上はsRGB比95%にするという。

ノートPCは、CPUに第6世代Intel Coreプロセッサを採用し、グラフィックスはNVIDIA GeForce GTX 965M搭載モデルとNVIDIA Quadro 1000M搭載モデルを用意する。上位モデルではUHS-II対応カードリーダーやUSB 3.1ポート、4K/60Hz出力可能なHDMI 2.0ポートを備えるなど、デスクトップPCに近い性能を持つ。

ノートPCのスペック

特に上位モデルにはデスクトップPCに負けないほどの機能を盛り込む

ノートPCでもスムーズなRAW現像でパフォーマンスをアピール

現行の15.6型モデルに加え、今後は17.3型モデルを追加する予定だ

コンセプトモデルに関しては「RAW現像向け」「VR-8K視聴・編集向け」「Adobe Creative Cloud推奨」の3モデルが用意されている。PCにそれほど詳しくないユーザーでも、「これを買っておけば大丈夫!」という用途に適した構成なので、自信をもってクリエイターに訴求していくとのことだ。

コンセプトモデルはPCに詳しくない人でもスペックで迷わない構成をコンセプトに展開する。まずはVR視聴・編集向けPCの製品化を予定する

「VR-8K視聴・編集向け」モデルも展示

マイクロソフトもクリエイター向けにWindows 10をアピール

日本マイクロソフト Windows & デバイス本部 Windows コンシューマーグループ エグゼクティブプロダクトマネージャー 藤原正三氏

発表会には日本マイクロソフト Windows & デバイス本部 Windows コンシューマーグループ エグゼクティブプロダクトマネージャー 藤原正三氏も登壇し、Windows 10のクリエイター市場について、現状分析と取り組みについて語った。

はじめにWindows 10の現在の普及台数について紹介し、2016年1月現在でWindows 10が稼働しているデバイスは2億台以上、法人や教育機関では2,200万台以上とのことだ。

Windows 10の最新機能をすべて使ってもらうためにも新しいデバイス活用を訴求していく方針で、マウスコンピューターをはじめとするOEMパートナーや、同社のSurfaceデバイスによるプロモーションに注力、それと平行して、Windowsデバイスを買ったユーザーに対しては無償アップグレードを提供する。この2つがWindows 10のマーケティングの柱と語る。

2016年1月現在でのWindows 10搭載デバイスは2億台を突破

デバイスのプロモーションと、無償アップグレード促進がWindows 10におけるマーケティングの柱となっている

Windows 10はゲーマーやクリエイターに向けても積極的に取り組んでおり、ゲーマーに対しては「GAME DAY」のようなイベントを開催したり、クリエイターに対しては、同社のキャンペーンサイト「People Windows」やAdobeのカンファレンス「Adobe MAX」へのスポンサードで訴求している。「かつてはコンテンツを作る人と見る人が分かれていたが、いまでは誰でもコンテンツを作るクリエイターになれる。それをマイクロソフトとして支えたい」(藤原氏)。

Adobeと連携してLightroomやPhotoShopなどのアプリケーションでWindows 10への最適化しているという

Windows 10からは標準でRAW形式のファイルをサポートする

「DAIV」については、すそ野が広がっているクリエイター向けの実用的なデバイスとして評価しており、今後もマイクロソフトとマウスコンピューターの協力関係を強化していくとしている。