「仕事でミスをして周りに迷惑を掛けたのに、一言も謝らない」「ミスを注意したら、怒り出したり、機嫌が悪くなったりする」。一緒に仕事を進める際にやりづらさを感じてしまう相手ですが、これってやっぱりプライドが高いからなのでしょうか?

「いえ、本当の意味でプライドが高い人は、自分に自信があるので、決して偉ぶらず、間違いを受け止めて自分の成長の糧としていくものです。今回のように自分の誤りを認めたくない人は、逆に自分に自信がなくてコンプレックスが強く、承認欲求の強い人です」

こう解説するのは、『「上から目線」の構造』(日本経済新聞出版社)など、ビジネスシーンの心理学に明るい心理学博士の榎本博明さん。謝らない人は、「ミス=自分を否定されること」ととらえるため、受け入れることに拒否反応を示すそう。

「また、物事をすべて勝ち負けで判断する傾向があるため、自分が優位にいたいという気持ちも強いのです。相手が自分と同等、もしくは下の立場だったら、余計に認めようとしないですね」(榎本さん 以下同)

でも、ミスされた側としては一言言ってほしいですよね。謝ってもらうのは無理なのでしょうか?

「そういう相手に対して、ミスを指摘して謝罪の言葉を引き出そうとしても、逆恨みを買う可能性もあります。『この人はそういう人だから仕方ない』と、いい意味での"上から目線"を持ち、自分の感情をコントロールすると、相手に対してイライラすることもありませんよ」

また、この時大切にしたいのは、相手に謝ってもらうことが目的なのではなく、仕事をスムーズに進めることがゴールだということ。そのため、相手をうまく誘導する必要があるそうです。

「ミスした内容を普通に注意しても、相手も意固地になりまったく受け入れません。まずは伝えたい内容を『ここが良くないのでこうしてください』『なぜこうできないの?』などではなく、『ここをこういう風にするといいですよね』『こういうふうにしてほしいな』など、ポジティブな言葉に置き換えましょう。そして、相手の感情を刺激せずに淡々と伝えることが重要です」

榎本さんいわく、「60代など、年を重ねてもそういう人はいるので、無理に相手を変えるのは不可能」とのこと。

つまり、相手を変えようとせず、自分が一歩引いて伝え方を変えるほうが、仕事を円滑に回すには得策と言えそうですね。

<取材協力者プロフィール>
榎本博明
心理学博士。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て、現在、MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。心理学をベースにした企業研修、教育講演を行っている。著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(日本経済新聞出版社)など多数。

(南澤悠佳/ノオト)

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