国民投票は「ノー」

5日のギリシャ国民投票で、ユーロ圏やIMFなどの債権団の提案に対する答えは「ノー」と出ました。この結果を受けて、ギリシャと債権団の交渉の先行きは極めて不透明となりました。債権団がすぐに交渉再開に応じるのかさえも判然としません。

ギリシャが本格的に「デフォルト(債務不履行)」したり、「ユーロから離脱」したりするリスクが、市場で強く意識される状況が続きそうです。

「ノー=ユーロ離脱」ではないものの…

「ノー」は直接的にユーロ離脱を意味するわけではありません。あくまでも、債権団の提案を拒否したということです。5年にわたる緊縮策に苦しんできた国民は、「交渉を有利に進めることができる」とのチプラス首相の主張を信じたのかもしれません。

チプラス首相

今後、事態が今後どのように進展するか、明確なことは多くありませんが、以下に考察してみました。

債権団が交渉再開に応じるかは不透明。そもそも支援は失効

まず、チプラス政権は続投し、直ちに債権団に対して交渉再開を要求しそうです。これに対して、債権団が応じるかどうかは不透明です。ギリシャ支援(第2弾)が6月30日に失効したため、現時点で支援の枠組みはありません。IMFの支援は引き続き有効ですが、ギリシャが6月30日の返済を「延滞」したままなので、IMFは新たな支援に動きにくい状況です。

重要なカギを握るECB、ギリシャの銀行業務は再開するのか

目先的にはECBが重要なカギを握っています。ECBはギリシャの銀行に対するELA(緊急流動性支援)の枠を据え置いています。ギリシャは銀行を休業させ、ATMからの引き出しを制限していますが、ECBの流動性供給が滞ったままでは、銀行の再開にメドが立たず、流動性不足による銀行破たんのリスクが高まりそうです。ギリシャと債権団との交渉の進展にもよるでしょうが、ECBがどのような判断を下すかも大いに注目されます。

7月20日に満期を迎えるECB保有のギリシャ国債が償還されない場合は、ECBがELAを停止するかもしれません。その場合は、ギリシャの銀行破たん⇒金融危機が現実のものとなりそうです。

ギリシャ情勢の先行きが不透明になったことで、リスクオフが一段と強まる可能性もあるため、十分な注意が必要でしょう。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。