今後の株価動向次第では、FRBの金融政策運営が難しくなる可能性

米国の2月の米雇用統計が「強め」の内容だったことで、FRB(連邦準備制度理事会)が早期の利上げに動くとの観測が市場で強まった。3月17-18日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、利上げ開始まで「忍耐強く(patient)」待てるとのキーワードが声明文から消え、その後早ければ6月にも利上げに踏み切るとの見方が浮上した。

雇用統計の発表後、ドルは総じて堅調に推移したが、一方でNYダウは軟調な推移となった(3月11日の終値は同2日の最高値を3.6%下回った)。今後の株価動向次第では、FRBの金融政策運営は難しくなるかもしれない。

過去約20年間の利上げ局面における株価動向は?

そこで、過去約20年間の利上げ局面における株価動向について調べてみた。

経験的には、株価は利上げ開始前後にいったんピークをつけ、下落することが多かった。ただし、下落期間や下落率はともに比較的マイルドなものだった。(1)1994年2月、(2)1997年3月、(3)1999年6月、(4)2004年6月の4回の利上げ開始のうち、株価がレンジで推移してピークとボトムが見分けにくい1999年のケースを除く3回で、下落期間は1~4か月、下落率は7~10%だった(図表参照。なお、1999年のケースでは利上げ開始から約6か月後に約16%の下落を経験している)。

一方、利上げ局面の終盤や終了後に、株価が大幅かつ長期間の下落を始めたケースが2回あった。2000年3月に始まったIT株バブルの崩壊であり、2007年春に発覚したサブプライム問題とそれに続く2008年9月のリーマン・ショックだ。それらは米国経済が抱えていた問題が利上げの累積的効果によって一気に表面化したものであり、その後の景気後退の主因となったものだ(株価が景気後退を先取りしたとみることもできる)。

つまり、利上げ開始に伴う株価の下落は短期間かつ小幅であり、押し目買いの機会を提供する一方で、利上げが進むなかでの株価の下落は長期間かつ大幅となる可能性もあり、早めのポジション手仕舞いが望ましい、と言えるかもしれない。

もっとも、過去20年間で利上げ局面は、単発だった1997年を含めても4回しかない。今回は未曽有の金融緩和のあとの、11年ぶりの「利上げ開始」ということあって、過去の経験則が通用するかどうかは一段と不透明だ。いずれにせよ、金融政策の大きな転換(の始まり)であることは間違いないため、株価の動向からも目が離せない。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。