本田技研工業は23日、東京・青山のホンダ本社にて、社長交代人事・役員人事に関する記者会見を実施した。現代表取締役社長執行役員の伊東孝紳氏、次期代表取締役社長執行役員に内定した八郷隆弘氏(現常務執行役員)が出席した。

記者会見に出席した伊東孝紳氏(写真左)と八郷隆弘氏(同右)

同社は23日の取締役会にて、八郷氏を今年4月に専務執行役員、6月に代表取締役社長執行役員とする人事を内定。伊東氏は6月で退任し、取締役相談役となる。内定人事は6月の定時株主総会終了後の取締役会にて、正式に決定するとのこと。

記者会見で、伊東氏は今回の社長人事に関して、「2009年に社長を引き継ぎ、この6年間で自動車産業を取り巻く環境は大きく変化しました。しかしホンダがめざす方向性は変わることなく、お客様に喜ばれる商品をお届けし、新しい技術にも継続的に挑戦していきます。2015年、飛躍への準備は整いました。若いリーダーの下、一丸となってチャレンジすべきと考え、八郷へ社長を引き継ぐことを決めました」と説明した。

続いて八郷氏が挨拶し、「私の役割は、これまで進めてきたチャレンジングな商品・技術をさらに進化させること、新しい価値を提供し、優れた魅力的な商品を求めやすい価格で提案することだと考えます。これらはホンダがつねに得意としてきたことであり、着実に展開していくため、全力で挑戦していきます」と述べた。

八郷氏は1959年生まれの55歳。1982年、本田技研工業に入社し、車体設計を中心に四輪車の研究・開発に従事。2001年に発売された2代目「CR-V」で開発責任者も務めた。2008年6月から同社執行役員に就任。2011年から同社生産本部鈴鹿製作所長、2012年からホンダモーターヨーロッパ・リミテッド取締役副社長を務めた後、2013年4月に本田技研工業(中国)投資有限公司副総経理、同年11月に本田技研科技(中国)有限公司副総経理に就任。2014年4月から本田技研工業の常務執行役員を務めている。

報道陣に求められ、八郷氏がポーズを決める場面も

伊東氏は八郷氏を、「ホンダがグローバルに展開する過程で、欧州や中国など、我々が課題としている地域のビジネス環境を整える仕事をしてもらいました。それらの経験が、今後のホンダの事業運営に必ず役立つはず」と評価。八郷氏は次期社長就任に関して、「年明けに伊東さんから電話でお話があり、大変な重責ではありますがお受けすることにしました」と明かし、「研究所時代に米国、直近では欧州・中国での事業を経験することができました。これらの幅広い経験を今後の事業に反映させたい」と決意を述べた。

伊東氏は約6年の任期を振り返り、「社長になりたての頃は世界同時不況の直後で、相当に厳しい環境の中で鍛えられたと思います。最も記憶に残っているのは東日本大震災。とくに栃木の研究開発部門がダメージを受け、今後数カ月は稼働不可能と思われる状況でした」。その後、鈴鹿製作所・埼玉製作所などにサテライトオフィスを設置することで、約2週間で開発業務を再開できたとのことで、「そのときは現場の力を非常に頼もしく感じました。当時、八郷は鈴鹿製作所にいて、彼も快く受け入れてくれました」と語った。

伊東氏は複数回にわたるリコール問題などにも言及し、「研究開発分野の課題が大きいと考え、昨年、突貫工事で建て直しを図りました」とコメント。2015年4月1日付で、専務執行役員の福尾幸一氏が本田技術研究所代表取締役社長執行役員に就任予定で、「彼を現場に投入し、社長に就任することで、今後の安定的な体制に向けての道筋は開けたとの認識です」(伊東氏)と説明していた。