日本電信電話(NTT)は17日、止まった画像にリアルな動きの印象を与える光投影技術「変幻灯」を発表した。精密な光のパターンを投影することで、絵画や写真などがまるで動いているように見える技術。今後、サイネージやインテリア、エンターテインメント分野などでの活用を見込む。

「変幻灯」の投影イメージ(左:投影前、右:投影後)

従来、静止物に新しい印象を与える手法としては、プロジェクタを使って対象に映像を投影する「プロジェクションマッピング」が有効だったが、この方法では映像を映し出す視覚効は得られても、対象自体に「動き」の印象を与えることは難しかった。

「変幻灯」では、印刷物や3次元の立体物といった止まった対象に、自然な動きを与える技術を実現。人間が自然な動きを知覚する際に働く視覚メカニズムの科学的知見を応用し、炎のゆらめきや、風の印象、人物が生きているような動きなどを絵画や写真に加えられるという。

NTT「変幻灯」紹介動画。写真の中のろうそくの火が揺れたり、絵画の中の人物が笑ったりするように見える

同技術は、コンピュータの中で静止対象が動く映像を作成。その後、そこからモノクロの動き情報のみを取り出し、対象に投影する。3D立体物の場合は、透過型ディスプレイにモノクロの動きパターンを投影する。

「変幻灯」のしくみ

通常、人間の脳は映像を見るとき、映像中の色/形/動きを個別に処理し、後で統合して一つの世界を認識する。「変幻灯」の投影を見るユーザーは、色や形は止まった対象から取得するが、「動き」のみ「変幻灯」で投影されたモノクロの映像から取得する。色や形は止まっているため、「動き」と実際の空間にはずれが生じるが、このずれを脳が補正するため、ユーザーは「動き」と形/色のずれに気づかず、まるで止まった対象の色や形が動いているように感じるという。

同社は、今後プロジェクションマッピング手法と組み合わせるなどして、広告やインテリア、芸術・エンターテインメント分野への活用を想定している。