安倍晋三首相は12日、衆院本会議において施政方針演説を行った。農政やTPPなど「改革」に向けた強い姿勢を打ち出した。

農政の大改革は、「待ったなし」

安倍首相は、農業人口の減少と平均年齢の高齢化が進む農政について、「大改革は、待ったなし」であるとし、「強い農業を創るための改革。農家の所得を増やすための改革を進める」ために、60年ぶりの農協改革を断行すると述べた。

具体的には、農協法に基づく現行の中央会制度を廃止し、全国中央会は一般社団法人に移行するとともに、農協にも会計士による監査を義務付ける。また、地域農協と協力して、ブランド化や海外展開などを進めていくほか、農業委員会制度の抜本改革にも取り組み、耕作放棄地の解消、農地の集積を加速させる。さらに、農業生産法人の要件緩和や「減反」の廃止に向けた取り組みを推進していく。

施政方針演説を行う安倍首相((C)内閣広報室)

TPP交渉は「出口が見えた」

TPP交渉については、「いよいよ出口が見えてまいりました」とし、早期の交渉妥結を目指す。欧州とのEPAについても、2015年中の大筋合意に向けて交渉を進めていく。

また、経済のグローバル化が進む中、全ての上場企業が、世界標準に則った新たな「コーポレートガバナンス・コード」に従うか、従わない場合はその理由を説明する義務を負うことになると指摘。その上で、法人実効税率を2.5%引き下げて20%台にすることで、国際的に遜色のない水準へと法人税改革を進めていくと話した。

「景気回復の風を全国に届ける」

「3本の矢」の経済政策については、有効求人倍率の上昇などを挙げ、「確実に成果を上げています」と強調。賃上げについては、「賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続け、景気回復の温かい風を全国津々浦々にまで届けていく」とし、これにより、経済再生と財政再建、社会保障改革の3つを、同時に達成していくと訴えた。

2020年度の財政健全化目標についても堅持し、夏までに具体的な計画を策定する。

地方創生、「地方にこそチャンスがある」

重点政策に掲げる「地方創生」については、「地方にこそチャンスがある」とし、若者や地域企業への支援策を打ち出した。具体的には、地方で就職する学生に対し、奨学金の返済を免除する新たな仕組みを策定するほか、創業から10年未満の企業を優先するための枠組みなどを設ける。

また、訪日外国人観光客の地方誘致に向けて、ビザ緩和などに取り組み、国内の税関や検疫、出入国管理の体制を拡充する。併せて、羽田・成田空港の発着枠を拡大し、アジアとのハブである沖縄では那覇空港第2滑走路の建設を進めていく。