英ARM社は、2月3日(現地時間)、2世代目となる64bit CPUであるCortex-A72やGPUなどの製品を発表した。A72は、最大2.5ギガヘルツで動作、従来のCortex-A15と比較して最大で3.5倍の性能を持ち、消費電力を25%削減できるという。また、Mali-T880 GPUやインターコネクト技術も発表した。同プロセッサコアを利用したSoCは、TSMC社で製造可能で、すでに10社がライセンスを取得したという。Cortex-A72を採用した製品は、2016年には出荷されると想定されている。

Cortex-A72の構成イメージ

Cortex-A72は、ARMv8-A、64bitアーテキクチャの2世代目のプロセッサ。ARMv8-Aは、32bitアーキテクチャであるARMv7を含み、64bit命令を実行可能なプロセッサのアーキテクチャ。すでに、Cortex-A57、53が発表され、これを採用したSoCも登場している。Cortex-A57は20ナノメータープロセスでの製造を想定して設計されていたが、Cortex-A72は、16ナノメーターFinFET(Fin型電界効果トランジスタ)での製造を想定して設計されている。16ナノメートルプロセスで製造された場合、最大2.5ギガヘルツでの動作が可能だという。また、同じ電力枠で見た場合、Cortex-A72は、32bitプロセッサCortex-A15(28ナノメートルプロセスでの製造を前提に設計)の3.5倍の処理性能があり、前世代の64bitプロセッサであるCortex-A57(製造は20ナノメータープロセスを想定)の1.8倍の性能の性能があるという。

消費電力という点でみると、同じ処理(負荷)を実行させた場合Cortex-A72は、Cortex-A15の75%の消費電力になるという。また、ARM社が持つ、big.LITTLE技術を使うと、さらに40~60%の電力削減が見込めるという。なお、Cortex-A72でbit.LITTLEを構成する場合、Cortex-A53を組み合わせる。

Mali-T880は、Cortexシリーズなどと組み合わせることができるARM社のGPU。現行のMali-T760と比較すると、最大で1.8倍の性能を持ち、消費電力を最大40%削減している。

CoreLink CCI-500インターコネクト技術は、プロセッサ、GPU、メモリを接続するSoC内部の接続技術だ。システムの接続バンド幅を最大で2倍に引き上げ、前世代のCCI-400と比較して最大で30%メモリパフォーマンスを高めることができる。このインターコネクト技術は、複数のプロセッサのキャッシュメモリやGPU、メモリ間でのコヒーレンシを保つために利用される。MaliシリーズGPUなどとの接続に利用したばあい、4Kビデオの扱いなどが容易になるという。これは、一般にモバイルシステムでは、GPUは独自のメモリを持たず、メインメモリをフレームバッファなどとして利用するため、システムの内部接続の性能が表示性能にも影響するからだ。

このCortex-A72やMali-T880は、台湾TSMC社の16ナノメートルFinFET+技術で製造が可能で、スマートフォン向けでは、最大2.5ギガヘルツでの動作が可能になるという。

このCortex-A72については、すでにHiSilcon、MediaTek、Qualcomm、Rockchipなど10社が発表時点でライセンス契約を結んでいるという。また、開発用ツールとしてはCadence社、Synopsys社が対応する。