藤井動物病院と整形外科専門獣医師グループの「ONE for Animals(ワンフォーアニマル)」はこのほど、特殊な整形外科症例を大幅な時間短縮をもって成功させた、と公表した。

3Dプリンターモデル

従来、1回の手術では元に戻すことが極めて難しかった特殊な整形外科症例。今回、3Dプリンターモデルを使用し模擬手術を実施することで成功したという。同時にこの症例は、2014年の日本小動物獣医学会(関東・東京)の地区学会長賞も受賞している。

3Dモデルでの術前計画と模擬手術で、正確かつ大幅な時間短縮を実現

従来は、前腕に重度変形が生じた場合には骨切り変形矯正が必要となり、変形点が単純な場合、比較的容易に矯正が可能だった。しかし実際は、変形点が複数あり、変形中心が骨軸上に存在せず矯正が困難という場合があるという。また、1本の骨切りでの矯正では、橈骨(とうこつ)接合面が少なく、矯正後の固定破綻や矯正不良が生じる可能性があった。

上・模擬手術と、下・3Dプリンターモデル矯正

今回の試みでは、3Dプリンターモデル(以下、3Dモデル)をもとに、1歳のイタリアン・グレーハウンドの変形矯正手術を実施。3Dモデルを使い術前計画と模擬手術を行い、手術をすることで今まで矯正が困難で矯正不良などの術後合併症が生じやすかった「変形点が複数ある前腕の矯正手術」を正確に実施できた。従来行われていた、術者の主観に頼る手術と異なり、正確に矯正を行うことが可能で、変形矯正の困難な症例を正確かつ大幅な時間短縮をもって成功させることができるようになった。

術前と術後の比較

術後8週間後の画像

3Dモデルの使用には、様々な有用点がある。模擬手術で、骨切りラインやプレートの設置部位などを実物大のモデルで確認できる。3Dモデルに合わせ、術中の骨切りが可能。また、術前に矯正後の骨に適合するプレート設計が可能で、計画通りの矯正が行いやすい。3Dモデルでの模擬手術は従来に比べ、より具体的に本手術に近い形で模擬手術が可能になり、本手術での手順などチーム内での共通認識が深まり、スムーズに本手術ができる、などがあげられるという。