歌手・倖田來未が、360度の映像世界を体感できる世界初のバーチャルリアリティミュージックビデオ(以下VRMV)「Dance In The Rain」を制作し、9月にイギリス・ロンドンで開催されたアートフェス「TENT LONDON」で初披露した。2014年12月から15周年イヤーに突入する倖田。これまでさまざまな分野で革新を追い求めてきた倖田にとって、今回の試みにはどのような思いが込められているのか。

「Dance In The Rain」をリリースした倖田來未

このVRMVは、ヘッドマウントディスプレイのオキュラス・リフトに立体音響システムを加えることで、360度の映像世界が体感できるというもの。各国のアートコンペティションで数々の賞を受賞し、昨年はパリ・シャトレ座で初音ミクのバーチャル公演を成功させたYKBXがトータルディレクションを手がけ、立体音響のエキスパートであるEvala、ファッションディレクターのミーシャ・ジャネットといったトップクリエイターたちが多数参加している。

このプロジェクトに関して、「世界初の映像コンテンツということで、日本が誇るアーティスト、クリエイター、ファッションブランドの方々と一緒に創りたいという思いがあって。倖田來未という声や体を通して、世界に向けて、日本のクリエイティブを表現できればと思ったんです」と語る倖田。「これだけ豪華な方々が集結してくださって。だからこそ、プレッシャーも相当なものでした」と振り返り、「一生懸命に応えたいと思い、監督とは何度もディスカッションを重ね一緒に作り上げた作品です」と仕上がりに自信をのぞかせた。

同曲は5日にデジタル・シングルとしてiTunes先行発売となり、VRMVとは別に2DのMVも制作された。2Dでは4人の主人公が「恐怖・失意・感謝・希望」の感情をそれぞれ表現し、白い塔の中で椅子に拘束された倖田は"ある映像"を見たあとに、自由へと解き放たれる。その"ある映像"が、VRMVの内容とリンクしている。このことについて倖田は「VRMVはいわばティザーで、2Dの映像で全貌が見えるようになっていて」と説明。「悲しみの雨が降っても、勇ましく踊り続ける人間の力強さを身体で表現したかったんです。と、同時に、たとえ倒れて、動けなくなっても、時間は進み続けている。そこで立ち止まるか、歩き出すか、踊り出すかは自分次第で変わってくる」と語るなど、"ダンス=生きる"と捉えた。

倖田が昨年から今年にかけてライブを中心に活動していたのは、「みんなに生で私の歌声を聴いてほしい、ダンスを見てほしいという思い」があったから。彼女にとっての15周年は「ただの数字で、ただの通過点」に過ぎず、「今回、クリエイティブな発想をもった方々とご一緒をさせていただいてかなり刺激を受けましたし、新しい世界を発見することもできた」と今回の挑戦にも満足気。しかし、現状に甘んじることなく、「これからどんな面白いことが待っているんだろう? と思うと私自身今からすごく楽しみだし、変化していく自分に期待しているんです」と革新の方向性はすでに未来へと向かっている。