10月29日、米FOMC(連邦公開市場委員会)はQE(量的緩和)の終了を決定した。市場の反応は、米株が小幅安、米長短金利が上昇し、ドルは全面高だった。市場は、FOMCの決定を「タカ派的(利上げに向けて積極的)」と判断したようだ。FOMC直後の政策金利(FFレート)先物に基づくと、利上げ開始時期として、市場の織り込み度合いが5割を超えるのは、2015年7月29日(のFOMC)となった。わずか2日前には2015年10月28日(のFOMC)だったので、利上げ開始時期の市場予想は約3か月、FOMC2回分早まった計算となる。

今回のFOMCの決定に対して、「(利上げに慎重な)ハト派」のメンバーが1人反対票を投じた。前回のFOMCで反対票を投じた「タカ派」のメンバー2人は賛成に回ったから、決定そのものが「タカ派」に寄ったと判断するのは妥当かもしれない。ただ、FOMC声明文を精査すると、内容はそれほど「タカ派的」ではなかったようにも思える。

FOMCの3つの注目点を検証すると、

  • (1)QE(量的緩和)は終了した。ただこれはほぼ既定路線だった。コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁が「継続」を主張して、決定に対して反対票を投じた(投票権を持たないブラード・セントルイス連銀総裁も、FOMC前にQE継続を主張していた)。

  • (2)「(QE終了後も)かなりの期間(低金利を維持する)」とのフレーズは今回も残った。そして、利上げに関して、「雇用や物価の目標に接近しても、政策金利は標準的な水準を下回り続ける可能性がある」との文言も前回と同じだった。

  • (3)世界景気の下方リスクについての言及はなかった。むしろ、「景気と雇用の見通しに関するリスクはほぼ均衡している」との判断が示された。また、雇用について「労働力の利用度の低さは徐々に解消されている」と、判断が上方修正された。ただ一方で、物価について「インフレ率は目標を下回り続けており、市場のインフレ期待はやや低下した」との懸念が示された。

敢えて判定すると、上記の(1)は「タカ派的」、(2)は「ハト派的」、(3)はほぼ「中立」だろう(労働市場の改善を認めたことはやや「タカ派的」かもしれない)。具体的にどのような議論がなされたかは、3週間後の議事録の公表まで明らかにならない。

QEが終了したこともあって、市場の関心はますます「次」、つまり利上げ開始時期に向けられるだろう。今後は景気や物価関連の経済指標次第で、市場の金融政策予想が目まぐるしく変化する展開もありそうだ。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。