【レポート】

上戸彩主演『昼顔』、なぜ話題に? "視聴率右肩上がり"の理由を探る

25日に最終回を迎えるドラマ『昼顔 ~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系 22:00~ ※以下『昼顔』)が話題を集めている。第6話では10.9%だった視聴率が、その後13.8%、15.6%、15.1%、そして先週の第10話では過去最高の16.7%を記録。さらに、公式サイトの最新動画が「2日間で5万再生突破」の新記録を叩き出すなど、そのフィーバーは留まるところを知らない。

序盤から中盤にかけてそれほど注目されていなかった『昼顔』が、なぜここまで支持を集めることになったのか? その理由を探りつつ、直前に迫った最終回に向けて、男性目線での楽しみ方も挙げていきたい。

実は「看板に偽りあり」のドラマ

ドラマ『昼顔』で主演を務める上戸彩

"昼顔"の語源は1967年の映画で、これを情報番組『ノンストップ!』が"平日昼顔妻"として繰り返し取り上げたことが、そもそものはじまり。ただ、『ノンストップ!』で紹介されていた"昼顔妻"は、ドラマ『昼顔』で描かれている紗和(上戸彩)や利佳子(吉瀬美智子)とは全く違う。

最大の違いは、罪悪感と夫への不満。『ノンストップ!』の"昼顔妻"は、「夫への罪悪感はない」が78%(170人中122人)のアンケートが示すように、浮気と割り切って恋愛を楽しんでいる。だから、夫への不満は許容できる程度にすぎず、離婚する気もない。一方、紗和は夫や姑への罪悪感にさいなまれ、利佳子は夫への不満が募り、離婚する気マンマン。まずこのキャラ設定に、女性からの批判を避けるための工夫が施されていたのだ。

もともと女性は、「不倫をする女は女の敵」という意識が強い。その意味で本来、紗和や利佳子は「女の敵」なのだが、怖いもの見たさもあって、「番組が"不倫の大義名分"さえ用意してくれるのなら、見てみよう」という気持ちになる。そして『昼顔』における"不倫の大義名分"は、自分大好きな夫とのセックスレスや、妻を見下すごう慢な夫など、全てのはじまりは男側の非。だから「そんな状態で、あんなステキな男性が現れたら仕方ないか」と許容して見やすいのだ。

ちなみに、『ノンストップ!』における"昼顔妻"の相手は、営業マン、宅配業者、子どもスポーツ教室の先生など、「昼間に自由な時間を取れる」職業ばかり。その点、学校の先生である北野(斎藤工)は、夏休みなどの長期休み以外、平日午後3時に学校を抜けられない。実は『昼顔 ~平日午後3時の恋人たち~』というタイトルそのものが、ほぼ成立していなかったりする。

"ある層"からの圧倒的な支持

ではなぜ右肩上がりの視聴率を獲得できたのか? その答えはシンプルで、「リアルタイム視聴が見込める主婦ウケ一本に絞った」から。

録画機器やモバイルが発達した今、視聴率を支えているのは、主婦と中高年であることは間違いない。経営に関わることだけに、テレビ局がその両者狙いになるのは必然だが、実際ここまで割り切ったドラマは、ありそうでほとんどなかった。

だからこそ、「主婦ウケに特化した『昼顔』なら一定の視聴率が見込めるはず」、フジテレビにはそんな目算があっただろう。ただ、そこからの徹底ぶりが凄かった。まずは、ともに既婚で意外性のある上戸彩と吉瀬美智子、生々しいセクシーさのある斎藤工と北村一輝のキャスティング。次に、「不倫がバレる、バレない」のハラハラドキドキと、不倫のドロドロに相反するさわやかで美しい映像。さらに、「不倫はいいもの」「絶対ダメなもの」とハッキリ決めず、あいまいなまま進める脚本。主婦カラオケの定番『ハナミズキ』一青窈の主題歌など、主婦を狙い撃ちするものばかりだ。

そして、あの「北野と密会中の紗和に、彼の妻・乃里子(伊藤歩)が襲いかかってくる」シーンである。夢中になって見ている主婦たちは、「待ってました!」であり、「思わず口コミしたくなる」仕かけの演出が上手い。また、「キャリアウーマンで家事が嫌い」という主婦に嫌われる要素を詰め込んだ乃里子のキャラ設定も徹底している。

もともと記事にしやすいテーマである上に、視聴率が上がり、口コミが増えれば、ウェブメディアは次々に食いつく。さらに、それらを見た主婦以外の層も、「じゃあ一度見てみよう」とするため、視聴率が右肩上がりになったのだろう。昨年春に放送された篠原涼子主演の『ラスト シンデレラ』でも同様の流れが見られたが、『昼顔』の成功を受けて今後主婦にターゲットを絞った作品が増えるかもしれない。

キケンな『昼顔』ブームは来るか?

ただ、話題を呼んでいるとは言え、このドラマをきっかけに不倫が増えることはないと思われる。ほとんどの主婦がマジメに暮らしていて、『昼顔』はちょっとしたのぞき見の感覚。こっそり妄想したり、ささやかな背徳感を抱いたり、それを誰かと共有して楽しんでいるだけだろう。

過去を振り返ってみても、1980年代に一大ブームを起こした『金曜日の妻たちへ』のような衝撃はない。「不倫を促進してしまう」「いや、これが抑止力になる」なんて声を聞くが、不景気が続く中、世の主婦たちはそんなにバカではないのだ。つまり、「不倫モノはしばらくなかったし、ちょっと刺激的だから見て楽しもう」ということ。決して"不倫マニュアル"ではなく、"娯楽エンターテインメント"ではないか。

事実、視聴者の熱量が如実に表れる『YAHOO!テレビ』内のクチコミランキングを見ると、現在『昼顔』は今クール6位で、1位『あすなろ三三七拍子』の40%程度に留まっている。クチコミの内容を見ても女性のものばかりであり、やはり主婦ウケ狙いと言えるだろう。

では、男性たちはどのような視点から、最終回を楽しめばいいのか?

もともと『昼顔』は「男性が男性目線で見てもあまり楽しめない」ように作られている。何気なく見ても、どこが面白いのか分かりにくい。だからこそ発想の転換で、女性目線になり切って見て欲しいと思う。紗和のモノローグは、恋する女性の気持ちそのものだし、利佳子が「何に悩み、何に怒っているのか?」を考えれば、うっすら女心が理解できるだろう。

さらに、最終回の見どころである「2人の主婦が不倫の落とし前をどうつけるか?」も男性には参考になるだろう。とにかくここまで主婦のシェアが高いドラマは、なかなかお目にかかれない。それだけに興味のない人も、一歩引いた目線から見ておいて損はないと思われる。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。
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