地上最大の肉食動物であるホッキョクグマ。「シロクマ」の愛称で知られ、カナダなどを中心に北極圏に生息。体長は2~3メートル、体重は大きいもので500キログラム以上にもなるという。温暖化による気候変動などで生息数の減少が心配されているが、私たちがホッキョクグマを実際に目にする機会は動物園を除くとほとんどないと言えるだろう。

オスのホッキョクグマ、ユキオ。26歳とかなり高齢だ

今回は2頭のホッキョクグマがいるという都内の上野動物園を訪れ、その姿を目にしてきた。園内の動物の中でもかなり人気が高いという彼らは、どんな場所でどのように過ごしているのだろうか。

北極圏の氷壁と氷原をイメージした運動場

水の流れ込むプールで泳ぐ姿も見られる

上野動物園内の「ホッキョクグマとアザラシの海」は、2011年の秋に改修工事を終えてリニューアルしたエリアだ。取材日の14時過ぎにそこを訪れると、オスのホッキョクグマであるユキオが出迎えてくれた。ユキオはドイツの動物園で産まれた個体で、岡山市の池田動物園を経て2000年に上野動物園へ来園。その後、繁殖を目的として一旦は北海道の釧路市動物園へ移ったものの、2014年4月には再び上野動物園へと戻ってきた。

立ち上がるとよりいっそう大きく見える

背泳ぎもお手のもの

ユキオの体長は鼻の先からお尻までで2メートルほど、立ち上がるとおよそ3メートルにも達する。体重は約280キログラムで、運動場内を歩き回ったりプールを泳いだりする姿は迫力満点だ。ただし既に26歳でホッキョクグマの中ではかなり高齢の部類ということもあり、性格は大人しく温厚。基本的にはのんびりおっとりと行動し、どっしりとした紳士タイプのクマなのだという。

大きなタイヤにじゃれて遊ぶ様子

豪快に水しぶきを放つ

日陰でゴロン。とってもユーモラス

お尻のしっぽはごく短く小さい

取材したのは8月のよく晴れた日。暑さにまいっていないか少し心配だったが、思ったよりも元気そうな様子で運動場内のタイヤを使って遊んだり、器用かつダイナミックにプールを泳いだりしていた。かと思うと、時には運動場内の日陰でユーモラスに転がったりもする。表情や行動をずっと眺めていてもなかなか飽きることのない動物だ。

水中を泳ぐ姿は「水と氷の回廊」内から間近に見ることができる

ガラス越しにすぐ近くで見る巨体は迫力満点だ

足を開いてスイスイと方向転換

運動場やプールにいる姿を上から眺めるのも楽しいが、何と言っても魅力的なのが「水と氷の回廊」という建物内から見る水中のホッキョクグマ。大きなガラスのすぐ向こう側で、上手に泳いだりエサを見つけて食べたりする様子を間近に見ることができる。

水中で与えられたエサを上手に見つけて食べる

すぐ近くで見られるとあって子どもたちにも人気

足の裏、手のひらと比べてもこんなに大きい

飼育員さんによるオススメの観察時間は、おやつタイムとなる午前10時30分と午後の14時30分前後とのこと。ちなみに上野動物園で与えているホッキョクグマのエサは馬肉や鶏肉、魚などに加え、リンゴやサツマイモといった果物や野菜も。1日に食べる量はオスで15キロ、メスで10キロほど。巨体ならではの大食漢ぶりには改めて驚かされる。

メスのホッキョクグマ、デア。5歳とまだ若い((C)公益財団法人東京動物園協会)

上野動物園にはユキオのほかにもう1頭、デアというメスのホッキョクグマもいる。同園では基本的に展示を入れ替えているため、この日は残念ながら会うことが出来なかったが、まだ5歳とかなり若い個体だ。体重は200キロくらいでユキオよりもやや小柄、イタリアのファザーノ動物園生まれということもあって少々おてんばな性格で、動きもユキオよりかなりスピーディーとのこと。

イタリアの動物園にいた頃のデア((C)公益財団法人東京動物園協会)

デアが上野動物園にやってきたのは2012年3月。それまで暮らしていたイタリアのファザーノ動物園には深いプールがなかったらしく、「最初の頃は泳ぐのを怖がっていたんですよ」と飼育員さんが面白いエピソードを教えてくれた。

ユキオとはかなり年齢差のあるカップルということになるが、2頭が今後ペアリングによる繁殖に至る可能性もあるという。ただ、これまではデアがまだ若かったことなどもあって、引き続き相性など様子を見ながら判断することになるそう。

午前と午後で1頭ずつの入れ替え展示となっている

大きく迫力のある体や動きだけでなく、時には器用な、そしてユーモラスな一面も見せてくれるホッキョクグマたち。その素顔を見にぜひ足を運んでみては。きっと彼らの魅力がより身近に感じられ、また会いに来たくなるはずだ。

上野動物園のアクセスはJR上野駅・公園口から徒歩5分、または京成電鉄上野駅・正面口などから。開園時間は9時30分~17時(入園は16時まで)。月曜休園(祝日や振替休日の場合は開園、翌日が休園)。入園料は一般600円、65歳以上300円、中学生200円(小学生以下と都内在住・在学の中学生は無料)。