もしも月がなくなってしまったら、地球にはどのような影響があるのか。26日にドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」で放送される『もし月がなかったら』(17:00~18:00 ※15日に放送済)では、コンピュータアニメーションとNASAの映像に科学者たちが解説を加え、地球と月の深い関係に迫る。

『もし月がなかったら』

地球の唯一の衛星・月。地球の4分の1ほどの大きさで、表面積は南北アメリカ大陸ほど。誕生の起源は諸説あるが、「惑星の衝突で月が生まれた」という大胆な説を1960年代に発表したのが、アポロ計画前から月面地理を研究していたハートマンだった。その月が毎年、約4センチずつ地球から遠ざかっている。今から数十億年後、月が地球の衛星でなくなった時、地球はどうなってしまうのか。

月が遠ざかるにつれて地球の自転は遅くなり、1日の時間も長くなる。現在の月と地球の距離は約38万キロ。約2万キロの時代は、1日の長さが約4時間ほどだったという。そして、月の引力は地球の自転軸の傾きを23度に保ち、わずか1度でもずれると地球では大変動が発生。月は地球の気候の調節装置のような役割を担い、一説によると地軸がわずかに傾いたために緑地帯だったサハラが砂漠化したとも。地軸が大きく傾くと、雪に埋もれたエジプトや灼熱の砂漠化した南極など、今では想像もできない異常変動が起こる。

自転を鈍らせる月が完全に無くなってしまうと地球は超高速で自転をはじめる。1日の長さは今の約3分の1。時速数百キロの強風や砂嵐が吹き荒れ、人類の進化の道は閉ざされる。そして、1億年に1度の確率で地球に衝突が起こり、その度に大量絶滅が発生。進化生物学者は、「月が衝突の盾になってくれたのかもしれません」と話す。まさに、月は幸運の象徴とも言える。

これだけ大切な月を地球につなぎ留めておく手段はないのか。SFの域にはなるが、その1つが海にダムを作ること。月が遠ざかる原因は潮の干満であることから、ダムで干満を抑えれば理論上は、月の後退を遅らせることができる。アイオワ州立大のエイビアン氏の構想も大胆。木星の衛星を1つ奪って、月の代わりに地球を回らせるというもの。人類の明るい未来のために、さらなる文明の発達が求められる。

月と地球の距離が約2万キロだった時は1日は約4時間だった

月は毎年約4センチずつ遠ざかっている