環境省はこのほど、水質浄化能力や豊かな生態系など、全国の湿原や干潟が持つ経済的な価値を初めて試算し、年間1兆5,000億円程度に上ると発表した。

評価対象は、釧路湿原(北海道)などの湿原約850カ所・約11万ヘクタール、および有明海(佐賀県など)などの干潟約1,300カ所・約5万ヘクタール。

換算方法については、湿原では水質浄化能力を浄水施設の建設・維持費に、水量調整能力をダムに換算するなどしたほか、干潟ではアサリやハマグリ、ノリの漁業生産額などを考慮して、1ヘクタール当たりの価値を推計し、湿原と干潟の総面積にかけて見積もった。

湿原の生態系サービスの経済価値評価結果(出典:環境省Webサイト)

干潟の生態系サービスの経済価値試算結果(出典:環境省Webサイト)

その結果、評価額は湿原が年間約8,391億円~9,711億円、干潟が年間約6,103億円、総額約1兆4,494億円~1兆5,814億円となった。

日本の湿原・干潟は、不毛の土地として埋め立てなどによる開発が進められたため、国内の生態系のなかでも特に近年の損失が大きい。国土地理院および環境省の調査によると、湿原は1990年代までの100年で面積の約6割、干潟は50年で約4割失われたという。今回の試算を提示することで、保全活動に対する認識の向上を図りたい考えだ。