米NVIDIAは12日(現地時間)、ノートPC向けGPUの新モデル「GeForce 800M」シリーズを発表した。新機能「Battery Boost」によって、ゲーミングノートPCの課題であるゲームプレイ時におけるバッテリ駆動時間を延ばすという。また、デスクトップ向けGPUで利用できた機能をノートPCでも利用可能とした。

ラインナップは「GeForce GTX 880M」「GeForce GTX 870M」「GeForce GTX 860M」「GeForce GTX 850M」「GeForce 840M」「GeForce 830M」「GeForce 820M」の7モデル。

GeForce GTX 880M

GeForce GTX 870M

GeForce GTX 860M

GeForce GTX 850M

GeForce 840M

GeForce 830M

GeForce 820M

このうち、「GeForce GTX 880M」と「GeForce GTX 870M」はKeplerアーキテクチャ、「GeForce GTX 850M」「GeForce 840M」「GeForce 830M」はMaxwellアーキテクチャ、「GeForce 820M」は28nmプロセスにシュリンクしたFermiアーキテクチャをベースとした製品となっている。

GeForce GTXシリーズでは15~60%性能が向上

GeForce 830Mは25%、GeForce 840Mは35%の性能向上

GeForce 840MはIntelの統合GPUであるIris Proよりも低消費電力で高い性能を発揮すると主張する

また、「GeForce GTX 860M」はKeplerアーキテクチャをベースとしたものと、Maxwellアーキテクチャをベースしたものの2種類が存在しており、それぞれCUDAコアの数やGPUのクロックが異なっている。各製品の仕様をまとめたのが、以下の表となる。ただし、製品名に"GTX"が付かない3製品についてはほとんど仕様が公開されていない。

■GeForce GTX 800Mシリーズ
モデル名 GTX 880M GTX 870M GTX 860M GTX 860M GTX 850M
プロセス 28nm 28nm 28nm 28nm 28nm
アーキテクチャ Kepler Kepler Kepler Maxwell Maxwell
CUDAコア数 1536基 1344基 1152基 640基 640基
クロック 954MHz + Boost 941MHz + Boost 797MHz + Boost 1029MHz + Boost 876MHz + Boost
メモリクロック 2500MHz 2500MHz 2500MHz 2500MHz 2500MHz
メモリ容量 GDDR5 4GB GDDR5 3GB GDDR5 2GB GDDR5 2GB GDDR5 2GB
メモリバス幅 256bit 192bit 128bit 128bit 128bit
対応機能 Battery Boost
GameStream
ShadowPlay
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
SLI
GeForce Experience
Battery Boost
GameStream
ShadowPlay
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
SLI
GeForce Experience
Battery Boost
GameStream
ShadowPlay
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
SLI
GeForce Experience
Battery Boost
GameStream
ShadowPlay
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
SLI
GeForce Experience
Battery Boost
GameStream
ShadowPlay
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
SLI
GeForce Experience
■GeForce 800Mシリーズ
モデル名 840M 830M 820M
プロセス 28nm 28nm 28nm
アーキテクチャ Maxwell Maxwell Fermi
CUDAコア数 不明 不明 不明
クロック 不明 不明 不明
メモリクロック 不明 不明 不明
メモリ容量 GDDR3 2GB GDDR3 2GB GDDR3 2GB
メモリバス幅 64bit 64bit 64bit
対応機能 GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
GeForce Experience
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
GeForce Experience
GPU Boost 2.0
Optimus
PhysX
CUDA
GeForce Experience

ゲームプレイ時のバッテリ駆動時間を延ばす「Battery Boost」

さて、「GeForce 800M」シリーズのうち、製品名に"GTX"が付くモデルでは、ゲームプレイ時のバッテリ駆動時間を延ばすことができる「Battery Boost」という機能を新たに搭載する。

「Battery Boost」の背景として、ゲーマーは1時間以上ゲームをプレイしたいと考えているが、多くのゲーミングPCがバッテリでは50分以下の駆動時間となっているという課題がある

「Battery Boost」は、ゲームに合わせて設定を自動的に最適化する「GeForce Experience」上で利用できる機能で、主に2つの要素で構成されている。

1つ目はデスクトップ向けGPUでも利用できる「Frame Rate Target」で、フレームレートの上限をユーザーが設定して消費電力を低減する。「GeForce 800M」シリーズの「Frame Rate Target」では、設定したフレームレートに合わせてGPUのクロックや電圧も変化させ、より電力消費を抑えているという。

Frame Rate Targetでも20%から30%ほどバッテリ駆動時間は延びるが、Battery Boost全体では最大2倍となるという

2つ目は「GeForce Experience」から、ACアダプタでの駆動時とバッテリでの駆動時異なる画質設定を保存し、切り替えられること。バッテリ駆動時にはより負荷を抑えた設定でゲームプレイをすることで駆動時間を延ばすという。ただし、ゲームプレイ中に自動的に設定が変わるわけではなく、ACアダプタを抜き差しした際にゲームを起動しなおさないと設定が有効とならない。

GeForce ExperienceにBattery Boostに関する項目が追加。まず「Frame Rate Target」でフレームレートの上限を設定する。初期設定では30fpsとなっている

Batman:Arkham Cityでの設定画面。ACアダプタでを利用する場合

バッテリ駆動の場合。ACアダプタでもバッテリ駆動でも設定画面に表示されるスライダーを動かして、性能重視か駆動時間重視かを設定する。画面解像度などが最適化される

NVIDIAによると、「Battery Boost」によって従来と比較して最大2倍のバッテリ駆動し時間を実現するとしている。なお、「Frame Rate Target」はバッテリ駆動時のみに有効とできるほか、現状では個別のゲームタイトルに対して、異なるフレームレートを設定できないようである。

「ShadowPlay」や「GameStream」もノートPCで利用可能に

また、デスクトップ向けGPUで提供していたゲームプレイ中の動画を記録できる「ShadowPlay」や、PCでのゲーム画面をNVIDIAの携帯ゲーム機「SHIELD」へ転送する「GameStream」もノートPC向けGPUで利用できる。

ShadowPlay

GameStream。現在GameStreamに対応している受け手側の端末はSHIELDのみ。日本国内ではSHIELDが販売されていないので、残念ながら日本にはあまり関係のない機能となっている。Tegra Note 7あたりが対応してくれれば良いのだが……

「ShadowPlay」と「GameStream」については、3月末に提供予定のドライバにアップデートすることで、KeplerアーキテクチャベースのGeForce GTX 700MシリーズとGeForce GTX 600Mシリーズでも利用できるようになる見込みとなっている。

「GeForce GTX 800M」シリーズを搭載したゲーミングノートPCは、DELLのAlienwareや、GIGABYTE、Lenovo、ASUSTeK Computer、MSI、Razerといったメーカーから市場に投入される予定だという。