知的な男性は、特に20代後半以上の女性に人気

現在、婚活中の友人男性(37歳)曰く、男性は30歳を過ぎると知性的な一面をアピールしたほうが女性のハートをつかみやすいという。これは数々の合コンや婚活イベントなどに参加してきた彼が、そこで出会った女性たちから強く実感したことらしい。

彼によると、知的な男性は特に20代後半以上の女性に人気が高く、婚活の対象と見なされることが多いという。若いころはお洒落でイケメンでノリがいいことを彼氏の条件としていた女性も、大人になるにつれ、だんだん男性の内面を重視するようになり、中でも「頭の良さ」は大きなポイントになってくるようだ。

先日、彼が合コンで出会った31歳の独身女性は「結婚するなら知的な男の人がいい。だから、学歴も気になっちゃう」とあからさまに口にしていたという。彼女の頭の中には「知的=仕事ができる=経済力がある」という公式じみた考えがあり、だからこそ結婚相手を見定める第一段階として、そこを重視するのだとか。彼女は「やっぱり優秀な遺伝子を残したいしねー」と生々しいことも口走っていたらしい。

かくして、件(くだん)の彼は自らの婚活に暗雲を感じている。僕から見ると、彼は決して馬鹿な男ではなく、仕事のためによく勉強もしているし一般的な知識も豊富だ。実際、勤めている会社でも重宝されており、収入面も安定している。しかし、合コンなどの時間が限られた出会いの場では、そういう内面的な知性が女性陣に伝わりにくく、だから苦戦してしまうという。これが「一流大学卒」などのわかりやすい肩書きがあれば、相手が知性を感じてくれるかもしれないが、彼の最終学歴はそうではないため、じっくり話し込まないと知性をアピールできない、というわけだ。

その一方で、本当は無学・無教養にもかかわらず、合コンなどの時間が限られた出会いの場だけでいいなら、初対面の女性に対して手短かつ簡単に「うわべの知性」をアピールする方法がある、と豪語する友人男性もいる。この「うわべの知性」とは、地道な勉学の積み重ねによって得られるような深みのあるものではなく、誰でも一夜漬けで得られるような軽い感覚のものだという。言わば、フェイク料理ならぬ「フェイク知性」だ。

「フェイク知性」の作り方

「フェイク知性」の作り方は至って簡単である。

いわゆる会話のネタになりやすい政治・経済・文化・芸術・スポーツなどの様々な分野において、それぞれひとつでいいからマニアックなことを覚えておき、それを女性の前で披露する。これだけでいい、という。

たとえば、ある男性が政治の話題にうとい人だったとしよう。

その場合、一から政治の勉強をするのは大変だが、なにかひとつだけ会話のネタを入手するのは簡単だ。それも誰もが知っている有名政治家のネタではなく、次のようなマニアックな雑学に絞るといい。

「昭和23年の国会内で当時の大蔵大臣だった泉山三六は国会内で酔っぱらって、会食中の山下春江議員にキスを迫ってクビになったんだよ」(事実です)

おそらく、こんな話を知っている一般女性はそういないだろう。しかし、政治の話とはいえ色恋ネタだけに女性にも伝わりやすく、なおかつ「こんなマニアックなことを知っているということは、きっと彼は政治に詳しい人なのだろう」と勝手に勘違いしてくれる可能性は高い。本当はこの話以外は、何も知らないにもかかわらずだ。

この手法は他のあらゆるジャンルにも使える。たとえば女性が知性を感じてくれる分野として芸術があるが、これも次のようなネタをひとつだけ知っておくといい。

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが7歳のときにドイツのフランクフルトで演奏したんだけど、それをたまたま聴いた作家のゲーテが、彼の演奏のレベルは絵画ではラファエロ、文学ではシェイクスピアに並ぶと評したらしいよ」(事実です)

このエピソードもさることながら、かの有名な音楽家・モーツァルトのことをフルネームで呼ぶということもポイントだ。こうすることで聞き手の女性は「こんなマニアックなことを知っているということは、きっと彼はクラシック音楽に造詣が深いのだろう」と勝手に勘違いしてくれる可能性がある。もちろん、本当はこれしか知らない、ましてやモーツァルトがどこの国の人かも知らない、にもかかわらずだ(オーストリアです)。

要するに、これは知識のドーナツ化なのである。ある分野において、もっとも重要な核となる中央部分の知識はぽっかり抜け落ちているものの、その周辺の誰もが知らないような、どうでもいいマニアックなネタだけは知っているということで、なんとなくその分野全体について詳しい人という勝手な印象を相手に与えることができる。

そして、こういった知識のドーナツ化をあらゆるジャンルで網羅し、それを会話の中にさりげなくまぎれこませれば、「会話の引き出しが多い博学で知的な人」というイメージを勝ち取ることができるだろう。フェイク知性の完成である。

あとでボロが出ても、知りませんけど。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。早稲田大学卒業。これまでの主な作品は「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」「雑草女に敵なし!」「Simple Heart」など。中でも「雑草女に敵なし!」は漫画家・朝基まさしによってコミカライズもされた。また、作家活動以外では大のプロ野球ファン(特に阪神)としても知られており、「粘着! プロ野球むしかえしニュース」「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「野球バカは実はクレバー」などの野球関連本も執筆するほか、各種スポーツ番組のコメンテーターも務めている。

オフィシャルブログ

山田隆道ツイッター